2012年10月29日

非居住者としての認定を得るためには


 さて、シンガポールに移住することにより初めてシンガポールの税制を享受できるのですが、ビジネスの比重の多くが、ビジネス活動の中心をすぐに海外に移転するのは簡単なことではなく、依然日本を軸に活動しつつも、徐々に軸足を海外に向けていくという展開が多いことと思われます。投資関連、企画関連、IT関連のビジネスに携わっている方々は、比較的海外への移住がしやすいかもしれませんが、製造業やリアル店舗による販売業となると、なかなか香港やシンガポールなどの諸外国にビジネスの機軸を移すのは簡単なことではありません。私に相談にいらっしゃる方々の中には、何とか日本で暮らしたままでシンガポールの節税メリットを享受できないか、というご依頼もありますが、さすがにこれは不可能です。

 どうしても、ご家族の方も含め、まずは生活の拠点を外国に移していただく必要がございます。それが「非居住者」の認定を受ける第一歩なのですが、それだけではありません。以下、非居住者となるための条件を考察してまいります。

【非居住者の定義】
 「居住者」とは、国内に「住所」があり、または、現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいい、日本国内で所得税を納める義務があります。「非居住者」は、居住者以外の個人です。

 ここでいう「住所」とは、「各人の生活の本拠」をいい、国内に「生活の本拠」があるかどうかは、客観的事実によって判断することになっています。すなわち形式的に住民票を海外に移動しただけでは認められず、実質的に生活の本拠が海外にあるようにきちんと生活の体裁を整える必要があります。
 また、「居所」とは、「その人の生活の本拠という程度には至らないが、その人が現実に居住している場所」とされています。

 複数の滞在地がある人場合、例えば日本とシンガポールを行き来している方の場合、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって総合的に判断することになります。
 
 ここで注意を要するのは、滞在日数のみによって形式に判断されるわけではないということです。外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者と認定されてしまうなる場合があります。例えば、日本国内にPE(恒久的施設)があると認定されてしまった場合は、外国での節税メリットが否定され、日本国内の税率で追徴課税がされてしまうことになります。次回以降の記事では、PEについても、詳しく考察していきたいと思います。


参考になるホームページ
国税庁 http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2012.htm

   
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2012年10月25日

移住するのに向いている職業


 今回の記事は、シンガポールや香港など、非居住者として移住するのに向いている職業を考えてみました。非居住者の定義としましては、以下のようになります。

a) 1年のうち183日以上移住先にいること(逆に言えば182日以内であれば日本にいてもよい)。
b) 182日以内で日本に帰国するといっても業務及びサービスは基本的に移住先で行っていること。日本での活動は商談、視察などに留める。
c) 日本に住居や代表者を務める法人を持っていないこと(PE:恒久的施設と言います)。

 それでは、以下見ていきましょう。

@ 投資顧問業、ファンド運営業
 シンガポールは、投資顧問業の認可が日本に比べて格段に取り易く、また日本の有価証券などに投資するにあたってもインターネットによる取引ができるため、多くの方がシンガポールに移住しております。弊事務所でも、何人もの方の移住のお手伝いをさせていただき、日本における納税代理人を引き受けさせていただいております。

A プログラマー、デザイナー
 プログラム開発などに携わる方々は、お仕事のうちの大半の時間が机とパソコンに向かうことによって成立する職業なので、移住に向いているといえます。SOHOという名目でご自宅で仕事をする方が大勢いらっしゃいますが、そのご自宅が海外になったとしても、打ち合わせはテレビ電話やスカイプでも可能ですので、たまには日本に帰国する、ぐらいのペースが保てると思います。

B 飲食業などのフランチャイズ展開
 日本でいくつか居酒屋やレストランを経営なさっていた方が、経営者としての地位を後継者に譲り、自身はシンガポールにフランチャイズ元の法人を設立したうえで、タイやインドネシアでも和食料理店を展開していくというスキームを組み上げております。ご自身は、フランチャイズ元の法人社長としてシンガポールを拠点とし、他の国にはフランチャイズ先として飲食業のノウハウを提供します。

C ブロガー
 人気ブログを運営されていらっしゃる方は、ブログに付いている商品広告バナーを閲覧者がクリックすることにより商品の売上げに繋がった場合、販売手数料が落ちるという「アフィリエイト収入」で結構な収入を得ていらっしゃるようです。このような場合、サーバー管理や情報の発信を海外から行うことにより、非居住者スキームが使える可能性があります。

D 芸能人、スポーツ選手、芸術家
 最近は、芸能人やスポーツ選手がクロスボーダーで活動するケースが多く見受けられます。主たる活動が海外の特定の国に移動した場合、芸能人やスポーツ選手は非居住者となりやすい職業と言えるでしょう。ただし、芸能人、スポーツ選手の場合は、「PE(恒久的施設)のないところに課税なし」の国際税務の原則の例外として扱われます。簡単に言うと、本人や所属事務所がどこの国の居住者であっても、芸能活動やスポーツ活動を行った国において源泉徴収されることになります。詳しくは、別の記事で詳しく述べさせていただきます。

E シンガポール不動産への投資
 シンガポールで行うべき事業がなかなか用意できない場合、税理士先生によってはシンガポールの不動産を購入して賃貸事業をお奨めするケースがあるようです。シンガポールでの不動産投資は、表面利回り3%ほどでしか回らないらしく、ビジネスとしてはなかなか成立しないようですが、シンガポール内にPE(恒久的施設)があるという外観を整えるために行うということになります。これについては、日本の国税当局が認めてくれるのかどうか、少し不透明な部分もあるようです。

 以上、非居住者という道を選択しやすいビジネスをいくつかご紹介いたしましたが、これに限らずケースバイケースでスキームを組むことは可能かと思われますので、あきらめずにご相談をいただければと存じます。

                 
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