2012年11月09日

外国税額控除について


 わが国では、内国法人の稼得した所得に対して全世界所得課税の制度を採用しているため、どこの国で稼得した所得であろうと日本の税制で課税対象にしてしまおうという考え方が根底にあります。いわゆる属人主義です。その一方、所得が発生した地域で課税を行うことを原則とする考え方を属地主義と言い、この方式を採用している国もあります。
 したがって、例えば外国で所得が発生した場合、属地主義を採用している外国で課税され、さらに日本国内の申告でも属人主義的に課税されてしまうと、国際二重課税の問題が生じます。この二重課税を排除・軽減する制度として、外国税額控除制度があります。

外国税額控除制度は、種類として次のものがあります。

(1) 直接外国税額控除
 海外売上から控除された源泉税など、外国で直接納付した外国税額を、日本国内における確定申告の際に納税額から控除する制度

(2) 間接外国税額控除
 外国の子会社等が納付した外国税額のうち内国法人が受ける配当に対応する部分を控除する制度。平成21年の税制改正で外国子会社益金不算入の制度が採用されたことにより、3年の経過措置を経て廃止されることになりました。

(3) みなし外国税額控除
 開発途上国等においては自国の経済開発促進の為に外国企業の誘致の手段として租税の減免措置がとる場合が多くありますが、その開発途上国等において減免措置がなかったとしたならば納付したであろう租税を外国法人税額等とみなして先進国側で外国税額控除を行う制度です。

(4) 特定外国子会社等に係る外国税額控除
 内国法人がタックス・ヘイブン対策税制の適用を受けて特定外国子会社等の留保金額について合算課税の適用を受ける場合に、その特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税額があるときは、その外国法人税額のうち課税対象留保金額に対応するものとして計算した金額を、その内国法人が納付する外国法人税額とみなして、法人税額から控除する制度です。

次回の記事以降で、廃止になる間接外国税額控除以外の制度について、詳しく解説していきたいと思います。


参考になるサイト
 国税庁:http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1240.htm
 
                   
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2012年11月08日

海外子会社からの受取配当金は益金不算入

 
 平成21年度の税制改正により、平成21年4月1日以後に開始する事業年度より、外国子会社から受ける配当などの額につき、その配当などの額の95%相当額を内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないことができるようになりました。これは、従来のように外国子会社の配当金に国内で課税されてしまうと、わが国企業が海外市場で獲得する利益の国内還流が阻害されるため、間接外国税額控除制度に代えて創設されたものです。

【制度の概要】
 内国法人(日本国内に本店または主たる事務所を有する法人をいいます。以下同じです。)が、外国子会社から受ける配当などの額について、その配当などの額の95%相当額をその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととする(=非課税所得とすることとする)制度です。
 なお、この制度の適用を受けるためには、確定申告書に益金の額に算入されない配当などの額およびその計算に関する明細を記載するとともに、一定の書類を保存する必要があります。

【従来からの変更点】
 従来においても、外国法人税と日本の法人税の二重課税を排除する措置がありましたが、それは外国子会社からの受取配当金を益金に算入する一方で、間接外国税額控除という制度を活用する方法でした。ただし、これは外国子会社からの受取配当金を日本の税率で計算してしまい、そこから海外で前払いしていた税金を単に差し引くだけなので、二重課税こそ排除されるものの日本の税率で課税されてしまうことに変わりはありません。これに対して、新規に創設された外国子会社配当益金不算入制度では、外国子会社からの配当に日本の法人税を課さないことによって、二重課税を排除しようというものです。つまり、従来は外国子会社配当について日本の法人税率で法人税が課されていたものが、外国子会社配当益金不算入制度では、受取配当部分に限り外国の法人税率による課税で完結するという変更があったと言えます。

 ただし、そうはいってもタックスヘイブン対策税制により、タックスヘイブンにある外国子法人に日本親会社等からの独立性が見い出せない場合は、日本法人の所得に外国法人の所得を合算して日本の税率で課税されることになるので、注意が必要です。


参考になるサイト
 国税庁:http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/091228/01_02.htm


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posted by ふみふみ at 18:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 国際税務を武器にする時代です | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする