2012年11月14日

組織再編はどのような場合に使用するのか?


 組織再編税制は、何となく難しそうで、上場企業などの大会社でなければなかなか縁がないのではないか、と思いがちです。ここでは、組織再編がどのような場合に使用され、中小企業でも利用価値のあるものなのかについて簡単に説明していきたいと思います。

【組織再編の種類】
● 合併
 これは、一番わかりやすい組織再編でありますので、説明も省略します。大会社のみならず、中小会社でも合併を検討する機会、実行する機会は多々あるかと存じます。

● 会社分割
 合併とは逆の概念であり、1つの会社を2つ以上に分けることです。これは、以下の場合に活用されます。
 @ 現状の会社を「優良な資産を持つ会社」と「不良資産を抱える会社」に分けたい場合
   (金融機関の要請によるケースや免許制で一定以上の純資産額を保持し続けなければいけないケースなど)
 A 会社の製造部門や販売部門を分社化したい場合
 B M&Aで一部の事業部門を第三者に譲渡する場合
 C 例えばホテル業などで、不動産を所有して賃貸する会社と、不動産を賃借して
    オペレーションをする会社に分けたい場合
 D 事業承継で2名以上の後継者に別々に事業を引き継がせたい場合
  活用範囲が広いため、平成13年の商法改正以来、私の周りでも頻繁に行われております。

● 現物出資
 通常会社の株式を所有する場合、現金を出資するのが一般的ですが、事業の不動産や棚卸資産など、金銭以外で出資することも可能です。これを現物出資と言いますが、現実に多用される現物出資は、設立時や増資時に資産を提供するというよりも、借入金を株式に転換する(いわゆるデッド・エクイティ・スワップ)ことにより、
 借入金の消滅 ⇒ 資産の提供と同義 ⇒ 現物出資による増資
という効果を得るパターンです。

● 株式移転
 一番なじみが薄い組織再編ですが、オーナーと事業会社の間に中間持株会社を設立する手法として使用されますので、今後持株会社戦略を実行する予定がある会社にとっては、有効な組織再編です。

● 株式交換
 とある会社を100%子会社化する場合、従来は金銭により株式を買い取るしかなかったのですが、平成11年の商法改正により、金銭の代わりに自社株式を発行して旧株主に付与することにより、金銭を交付せずに見返りとしての子会社株式を入手することが可能となりました。このため、ITバブルが華やかなりし頃、上場したての新興企業が自社株式を増刷してM&Aを次々と敢行し、傘下の子会社を増やしていきました。
 会社を売った側の旧株主(元オーナー)においても、換金可能な上場会社の株式を手に入れるわけなので、お互いが得をする取引ともてはやされました。最近は、株式市場の長期低迷により、以前ほど株式交換は使われなくなってきております。

● 事業譲渡
 M&Aの手法として、今でも多く使用されている手法です。単純に会社の一部(もしくは全部)の資産と負債を相手先に譲渡する手法であり、会社分割の包括承継と違い、すべての契約関係を巻き直さなければいけない煩雑さがあります。また、棚卸資産や有形固定資産の譲渡については、通常の売買取引と同様に消費税が発生するのも特徴です。合併や会社分割(吸収分割)で事業を引き取る場合、法的には隠れ債務(偶発債務、債務保証、訴訟債務)まで引き継いでしまいますが、事業譲渡の場合は事業譲渡契約書で記載された資産負債以外は引き継ぎの対象外なので、譲受側にはリスクの少ない手法として現在も重宝されております。

 次回以降は、それぞれの組織再編について、より詳しく解説していきたいと思います。


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