2014年06月25日

相続時精算課税制度の利用の仕方


 以前の記事で、生前贈与の利用の仕方について書いたことがあります(別記事:「日本における「贈与」の活用の仕方」をご参照下さい)。

 その中で、贈与は以下のメリットがある旨申し上げました。

@ 自分がまだ生存しているので「誰にどの資産を承継させるか」自分自身でコントロールできる。
A 相続人以外の者にも財産を譲ることができる。

 ただし、暦年贈与は年額110万円までしか認められず、それ以上の贈与を行うと高い贈与税が課税されることが欠点です。

 この欠点を補完する制度として、「相続時精算課税制度」が平成15年より設けられたのですが、今回はその活用方法について記載したいと思います。この制度は、贈与する親が65歳以上であり、かつ、子(子が亡くなっている場合は孫)が20歳以上であること、という条件的縛りがありますが、その条件に該当するのであれば、有効活用の余地の高い制度です。

【概要】 
 相続時精算課税制度とは、自分が生存しているうちに2500万円までは無税で贈与でき、2500万円を超過した金額からは20%の税率で贈与ができる制度です。この贈与は、複数回に小分けして実行しても差し支えありません。
 税率が低い代わりに、相続が発生した際には、生前にこの制度で贈与した財産を一旦相続財産に含めて相続税を計算し、事前に納付していた贈与税は「相続税の前払い」と考えて精算します。
 したがって、自分が生存しているうちに、低い税率で財産の承継をコントロールできるという意味では有効な手段です。

【メリット】 
メリット@:
 この制度は、特に賃貸物件を贈与する場合に効果を発揮します。賃貸物件を親が所有している場合、そのままでは親にどんどんキャッシュが蓄積されていき、相続財産がどんどん膨らんでしまいます。そこで、賃貸物件をこの制度を用いて生前贈与することにより、賃貸物件から得られる収益が子に帰属することになるので、相続財産の膨張を予防し、相続対策になるのです。

メリットA:
 また、この制度の対象となった財産は、贈与発生時の評価額が、そのまま相続発生時の評価計算に用いられますので、将来の値上がりが期待される物件については、相続時精算課税制度を利用して評価額の低いうちに生前贈与を実行してしまうことにより、将来的な相続財産の評価を減らす効果が期待できます。

【注意点】
注意点@:
 賃貸物件にローンが残っている場合、ローン付きで贈与してしまうと贈与時の不動産を時価で評価しなければならなくなってしまいます(負担付贈与)。また、その時価評価は、そのまま相続時の財産評価の際にも使用されてしまいます。通常、相続時の財産評価は、財産評価通達にのっとり時価よりも低い価格で評価できるはずですので、時価評価を強いられることは、不動産などの高額な資産においては、大きなマイナスとなり得ます。したがって、この制度を用いて生前贈与を実行する際には、ローンを事前に一括返済するなどして精算しておく方が有利になります。

注意点A:
 入居者から敷金などを預かっている場合は、預り敷金と同額の現金も贈与することにより、負担付贈与とみなされないことになります。逆に言えば、その現預金の贈与を怠ってしまうと、負担付き贈与とみなされ不動産が時価評価扱いとなってしまいますので、ご注意下さい。

 
注意点B:
 相続時精算課税制度を使用すると、同じ者に対して110万円の暦年贈与の控除は使用できなくなります。ただし、子の配偶者に暦年贈与をすることは可能なので、子が結婚している場合は配偶者に暦年贈与を行えば、精算課税制度と暦年贈与の両方を利用できることになります(お嫁さんの御舅様に対する態度も大きく変わるかもしれません)。

 
 なお、相続対策全般に言えることでもありますが、これらのスキームを利用する場合において、親子関係が健全であること、お子様の夫婦関係が健全であること、お子様夫婦が堅実な性格であり生前贈与しても浪費に走らないこと、などが前提条件として必要となります。
 なので、お子様が小さいうちから、仕事にかまけずに家族ときちんと向き合い、お子様に対して金銭的な教育もしっかりと行っておくことが、事業承継において極めて重要なポイントとなると言えるでしょう。

 
 
 
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2013年10月24日

非上場株式の評価@ 〜 株価を半額にできる配当還元方式


 今回の記事も含め、非上場株式の評価手法について、いくつか解説していきたいと思います。
 基本的には、以下のような図式が成り立ちます。

● 上場会社の株式 → 株価市場の株価
● 非上場会社の株式 → B/S(貸借対照表)の純資産価額 ÷ 発行済株式数(いわゆる1株当たり純資産法)

 上場会社の株式の場合、M&Aが行われる際などに、適正株価の問題が出てきますが、市場の値段が厳然と存在しているので、市場株価とそれほど乖離させることはできません。過去の3カ月平均や6カ月平均を採用するなどして、市場株価の9掛けぐらいで合意するのが一般的です。
 
 ただし、非上場株式の公正価値の評価については、いくつかの手法が存在し、場合によっては1株当たりの純資産価額よりも、株価を高く評価したり、低く評価したりすることが可能となります。

● 株式を高く評価したい場合
 一般的に、ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法が使用されます。これは企業将来の収益獲得能力を現在価値に置き換えて会社の価値を評価する手法です。具体的には、
(1)評価の対象となる会社の事業計画を入手し、その事業計画に基づき、各将来事業年度で生み出される将来収益(キャッシュ・フロー)を予測する。
(2)各将来事業年度の将来収益を現在価値に割り引く(ディスカウント)。
(3)将来収益の現在価値に、現預金などの余剰資産を加算し、有利子負債を控除して株主価値を算出する。
(4)株主価値 ÷ 発行済株式数 = 1株当たりの株式価値

 この手法ですが、まず将来的な事業利益を予想するところがポイントです。それを作成すること自体が手間であり、IPOを目指す会社でもない限り、通常の非上場会社ではなかなか作成していないものと思われます。
 また、将来的な予想収益が巨額であるほど高額の評価で算定されるため、現状の損益と将来的な予想収益に大きな乖離がある場合は、その理由づけに正当性があるかどうかが問題となります。
 また、現在価値の割引の際に使用される各指標(資本リスクプレミアム・β値・サイズリスクプレミアムなど)の適正性についても、採用される数値によって計算結果が変わるので問題となる場合があります。
 DCF法は、IPO途上の会社が第三者から資本を調達する場合や、M&Aが行われる場合など、株式を高めに評価するニーズがある場合に使用される傾向があります。

● 株式を低めに評価したい場合
 類似業種比準方式、もしくは配当還元法を使用することにより、概して株価が低めになる傾向があります。
 類似業種比準方式は、主に主要株主が所有する株式を評価する場合、配当還元方式は少数株主が所有する株式を評価する場合に使用される手法です。

 @ 類似業種比準方式
   複雑ですので、別記事にて詳しく解説したいと思います。

 A 配当還元法
  この評価方法は、あくまで特例です。
  少数株主の場合、原則会社を支配していないので、所有株式には「配当の期待」価値ぐらいしかありません。なので、例外的に株価を以下の計算式で計算します。
 
 1株あたり資本金額 × 配当率(%)/10%

 つまり、もしとある少数株主が100万円で出資した場合で、毎年の配当が10万円ずつであれば、株式の価値は当初の取得価額と同額の100万円になります。配当率が10%よりも大きい場合は価値が上がり、少ない場合は価値が下がります。
 ところで、ベンチャー企業や中小法人などでは、過去に一度も配当をしたことがない会社が数多く存在します。その場合はどうなるのでしょうか?
 配当率が5%以下の場合(無配を含む)は、一律5%配当とみなして評価します。すなわち、前述の例でいうと、無配の場合は、100万円の半額の50万円として評価されます。なので、当初の出資額の半額の評価とすることが可能なのです。税法における配当還元法の採用条件ですが、会社の規模などは関係ありません。同族株主以外の者が所有している限りは、一律に認められます。

【利用される場面】
 相続財産としての評価をする場合は、このように半額に評価されることにより所有者は得しますが、株式を譲渡する場面になると、半額で売ってしまうと売り手側は損をすることになります。なので、株式譲渡の際は、DCF法、純資産価額法、直近売買事例法(当初の取得価額と同額で売却できる場合など)が一般的に採用され、あまり日の目を見ることはないようです。
 
 
 
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