2012年11月23日

青色申告特別控除の利用


 確定申告の時期が近付いてまいりましたが、個人事業主の方や不動産所得のある方は青色申告特別控除制度を利用されていますか?

 通常は売上などの収入から必要経費を差し引いた金額が個人事業や不動産所得の金額となりますが、青色申告特別控除制度はさらにそこから65万円(若しくは10万円)を引くことができる制度です。その他、
・貸倒引当金の計上
・純損失の繰越しと繰戻し・・・事業所得等の損失を翌年以降3年間に渡って繰越できる
という特典もあり、節税効果があります。

 この青色申告特別控除を利用するためには、まず税務署に対して青色申告の申請手続をしなければなりません。原則として、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄税務署に提出する必要がありますが、新規開業した場合は、業務を開始した日から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出することになっております。

【65万円の青色申告特別控除を受けるための要件】 

1.不動産所得(事業的規模)又は事業所得があること。
2.これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(いわゆる複式簿記のことです)により記帳し
  帳簿を保存していること。
3.2の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を添付した確定申告書を3月15日までに
  提出すること。

 この3点の要件を満たしている場合は65万円の特別控除ができますが、充たしていない青色申告者は10万円の控除しか受けることができません。例えば、現金主義による会計処理を選択している人は、65万円控除は受けられません。
 また、不動産所得の場合は「事業的規模」を充たさなければならず、貸間やアパートであればおおむね10室以上、独立家屋の貸付は5棟以上で判断します。また、家屋は1棟でアパート2室、駐車場は5件でアパート1室分と計算します。事業的規模に該当するかは実態も考慮されるので、上記基準以下でも事業的規模に該当する場合もあります。
  
【65万円控除を受けられる場合の計算例】
<設例>
個人事業主Aさんの一年間の収入と支出は以下の通りでした。
・1年間の収入      1,500万円
・1年間の必要経費     700万円
・国民年金の支払額      18万円
・国民健康保険の支払額   22万円

@所得金額を計算します。
A.白色申告の場合              B.青色申告の場合
売上高   1,500万円          売上高      1,500万円
必要経費  −700万円          必要経費     −700万円
所得金額    800万円          青色申告控除   −65万円
                          所得金額       735万円

A次に所得から所得控除額を差し引いて、課税所得を計算します。
A.白色申告の場合               B.青色申告の場合
所得金額    800万円            所得金額    735万円
国民年金    −18万円            国民年金   −18万円
健康保険    −22万円            健康保険   −22万円
基礎控除    −38万円            基礎控除   −38万円
 課税所得   722万円            課税所得    657万円

B課税所得に所得税の税率をかけて所得税額を計算します。
A.白色申告の場合              B.青色申告の場合
722万円×23%−636,000円    657万円×20%−427,500円
=1,024,600円            =886,500円

D 所得税の差額
1,024,600円−886,500円=138,100円

 白色申告だったAさんが青色申告の65万円控除を受けることによって、所得税138,100円、住民税は、650,000円×10%=65,000円安くなり、さらに所得が下がることによって健康保険料も下がります。

 1年間でこれだけ支払う税金に差が出ますので、少々の手間はかかりますが、青色申告を申請する価値は大いにあると思います。


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2012年10月27日

独立したら、まずは小規模企業共済で節税


 個人事業という形態にしろ法人設立という形態にしろ、独立してある程度お客様もつきはじめ、毎月収入が安定的に見込めるようになると、
 ⇒ 代表者(個人事業主)の役員報酬(事業収入)も増える
 ⇒ 所得税の納税額も増える
ということになります。
 
 まず、企業間もないタイミングである程度毎月の可処分所得に余裕が出てきた場合は、手っ取り早く「小規模企業共済制度」に加入することをお勧めいたします。

 こちらは、個人事業の方でも法人の役員の方でも加入資格があり、言うなれば国が作った「経営者のための退職金制度」です。利点としては、退職金として毎月積み立てた金額が、個人所得税を計算するうえで全額「所得控除」ができるということです。日本の所得税率は累進課税なので、例えば、最高税率が30%で最高額の月7万円(年額84万円)をかけている方であれば、所得税が84万円×30%=25.2万円も節税になることになります。ちなみに、住民税の計算上もこの控除額は考慮されるので、節税金額はさらに大きいことになります。

【加入条件】
 常時使用する従業員が20人(商業とサービス業では5人)以下の個人事業主やその経営に携わる共同経営者、会社等の役員、一定規模以下の組合法人の役員の方が加入できます。

【掛け金の範囲】
 掛金月額は1,000円から7万円までの範囲(500円刻み)で自由に選べ、支払った掛け金の総額が全額所得控除できます。一方、掛け金の納付が困難であると認められた場合に限り、1,000円までの減額も可能です(事業経営の著しい悪化、疾病または負傷等)。

【借入制度】
 納付した掛金の7掛けぐらいの範囲で事業資金の貸付を受けることもできるます(現状において利率は1.5%)。 手続きは、収入印紙を持って商工中金の窓口に行けば即日現金を借りられますので、銀行で借りられない場合等は重宝するのではないでしょうか。

【共済金(解約手当金)の受取事由】
 個人事業の廃業、事業の譲渡、契約者の死亡、法人の解散、病気や怪我による役員の退任、任意解約等様々あり、事由に応じて「共済金A」、「共済金B」等、共済金の種類が異なります。
 共済金(解約手当金)の受取方法には、「一括受取」、「分割受取」、「両者の併用での受取」の3種類がありますが、共済金の種類によって、受取時の年齢や掛金残高に応じて選択できない受取方法もありますので注意が必要です。

【加入に際して気を付けたいこと】
@ 掛金納付月が6カ月未満の場合、すべての共済金を受け取れません。
A 掛金納付月が12カ月未満の場合、「準共済金」、任意解約等の「解約手当金」は受け取れません。(共済金A」、「共済金B」は受け取れます。)
B 任意解約や、個人事業を法人成りして、その法人の役員になった場合等の「解約手当金」は、
納付月数が240ヵ月(20年)未満の場合は、掛金合計額を下回ります。

 上記の点を注意しておけば、共済金(解約手当金)は、税法上「退職所得扱い」または「公的年金等の雑所得扱い」となりますので、毎月の給料でもらうよりもかなり有利です。
途中解約しないで済むように、無理のない加入をお勧め致します。

参考になるサイト
 中小機構  http://www.smrj.go.jp/skyosai/


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posted by ふみふみ at 08:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 個人所得の節税 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする