平成28年4月1日から平成31年12月31日までの期間限定の改正ですが、被相続人(つまり亡くなられた人)が居住用の自宅として使っていた土地・建物については、相続した人が同居しておらず被相続人の死後空家のままであったとしても、相続開始以後3年以内に売却すれば、居住用財産の3000万円控除が使えることになりました。この改正により、空家の売却が活発になることが期待されています。
不動産を売却した際に利益(譲渡所得)が出た場合には、その利益に対して税金が発生します。5年以内の短期譲渡の場合は39%、5年超の長期譲渡の場合でも20%の税金がかかります。しかも不動産の購入がはるか昔で購入価額が不明の場合は、購入価額が売却価格の5%と推定されてしまい(つまり利益が95%)、売却すると多額の納税が発生してしまうのです。
相続で引き継いだ財産は、被相続人の購入額が不明の場合が多いので、まさしくこのケースにあてはまり、納税額が大きくなる傾向にあります。それゆえ、相続した人がなかなか売却に踏ん切りがつかないまま、空家として放置されるケースが多かったのです。 空き家が増えると、どうしても近隣住民の生活環境に悪影響が出てしまいます。
そこで、相続した空家を3年以内に売却すれば、売却利益のうち3000万円までは税金がかからないように制度改正がなされたのです。平成28年になってからは、不動産業者の方はこの制度改正を後ろ盾に、不動産売却の勧誘をしているようです。
3000万円控除が適用されるための細かい条件は以下のとおりです。
@ 被相続人(死亡した人)の居住用家屋であったこと。
A 1981年5月31日以前に建築された家屋であること。
B 区分所有建築物ではないこと。 → 空家になった際に近隣住民が迷惑がかかる一戸建てを減らすことが目的だから。
C 売却額が1億円を超えないこと。
D 相続の開始した日から3年を経過した日の属する年の12月31日までに売却すること。 → 3年ピッタリではない点に留意。
E 相続開始から売却までの間に、一切使用されず空家であったこと。 → 一瞬でも賃貸したり、居住や事業で使用してしまったら、適用できなくなってしまいます。
F 当該譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又はこれに準ずる基準に適合するものであること。 → 建物を売却するために耐震基準をクリアーする工事をしなければならない。
G 建物を取り壊してから土地のみを売却しても大丈夫だが、上記Eの条件は満たすこと。
H 地方公共団体の長等により、EからGの要件を満たすことの確認書面を入手し、確定申告の際に添付すること。
ここで気になるのは、Fです。空家を売却する前に、耐震改修工事を行うのは、正直現実的はないでしょう。したがって、Gの「建物を取り壊してから売却」の方を選択するケースがほとんどだと思われます。
一つ注意が必要なのは、空家が立っている間は、固定資産税が住宅用地特例により軽減されているのですが(最大6分の1)、建物を取り壊した後の次の1月1日から、軽減措置がなくなり、土地の固定資産税が跳ね上がってしまうという点です。
したがいまして、取り壊す際は、売却が決まってから行ったほうが無難だと思われます。
また、自治体によっては、取り壊し費用に補助金を出す場合もあるようですので、不動産業者様等に確認することをお勧めさせていただきます。
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