以前、「海外子会社からの受取配当金は益金不算入」という記事を書いたことがありますが、今回は支配関係のない外国法人から国内法人が配当を受け取った場合にどのような課税関係なるのかについて記事を書いてみたいと思います。
その前に、まず、国内法人が国内法人より配当を受け取った場合について確認してみます。
受取配当金が課税されるべきかどうか、という議論については税務における論点の一つであり、本来は課税をするべきではない、言われることがあります。これは、配当を出す側の法人が、すでに法人税が課税された後の余剰金から配当を行っているので、それを受け取った側において、さらにこれを「利益」として扱い課税をしてしまうと、「二重課税」になってしまう、という考え方に基づきます。
この考え方を忠実に実行して「株式配当には課税をしない」という方針を採用している国としては、シンガポールやミャンマーなどが挙げられます。その一方で、配当を受け取った側にも課税される国としては、アメリカ、日本、インドネシアなどが上げられます。
さて、日本の場合ですが、個人が受け取った場合は、問答無用で二重課税となってしまうのですが、法人が受け取った場合は、若干違います。
法人が配当金を受け取った時の課税関係は、以下のとおりです。
● 支配している会社からの受取配当金
⇒ 全額益金不算入
● 支配していない会社からの受取配当金
⇒ (受取配当金 − 株式購入に要した負債の利子)× 50% = 益金不算入額
ここで、「支配している」というのは、発行済株式の25%以上の株式等を6カ月以上にわたって所有している場合を言います。
支配関係が存在する場合において、受取配当金の二重課税を回避するように配慮されているという言い方もできるのですが、実質的な意味としては、もしグループの子会社から受け取る配当に課税をしてしまうと、子会社よりも親会社の一事業部門として統合した方が税務上有利だということになってしまいますので、全国の企業が子会社政策をとりにくくなってしまう、という現実的な問題があります。
一方で、支配関係の存在しない企業からの配当になりますと、実際には資産運用目的で株式を所有するケースがほとんどだと思われますので(株式持ち合いによる安定株式工作の場合も含みます)、預金や債券の利息や株式のキャピタルゲインに課税がなされるのに、配当にだけ課税がなされないのはバランスが取れないことになります。それゆえ、100%課税にしてしまうという考えもあるかもしれませんが、配当に課税することが二重課税であることに変わりはないので、間を取って50%だけ課税することにしたようです。
以上の国内企業間の配当金の益金不算入については、法人税申告書の別表八(一)で具体的に計算されます。
次は、外国法人から国内法人が配当金を受け取る場合について考察していきます。
この場合においても、支配関係が25%以上あるかどうかによって、処理が変わってきます。
● 25%以上の支配関係がある場合
⇒ 海外子会社からの配当の益金不算入制度により、95%が益金不算入。
詳しくは、以前に掲載した記事、「海外子会社からの受取配当金は益金不算入」をご参照いただければと存じます。
● 所有割合が25%未満で支配関係がないと判定される場合
⇒ 配当に対して課税されますが、国内法人からの配当のように50%課税となるわけではなく、「外国税額控除」の制度を利用することになります。
外国税額控除とは、外国法人で配当源泉がなされた場合は、その金額に応じて、配当を受け取った国内法人が納付する法人税から控除することができる、という制度です。したがいまして、シンガポールのように、もともと株式配当で源泉が発生しない国の子会社から受け取った配当であれば、その適用もなく、普通に課税されてしまう、ということになります。
従来は、支配関係があるないに係らず、外国法人からの配当は原則課税であり、外国税額控除が使えるのみでした。
ただし、この制度下では、どの企業も外国子会社から配当を受け取ろうとしなくなってしまいます。それでは日本国内に資金が還流しませんので、平成21年度の税制改正により、外国法人でも支配関係があれば、ほぼ益金不算入ということに改正されたのです。
支配関係がない場合においては、従来通り配当金に対して課税がなされ、国内法人のように50%のディスカウントもありません。すなわち100%課税となります。したがいまして、海外企業に株式出資をする際は、25%以上の持分を所有するかどうかが、一つの考察ポイントとなります。
以上の外国法人からの配当金の益金不算入については、法人税申告書の別表八(二)で具体的に計算されます。
個人が配当金を受け取る場合は、配当する側が外国法人であろうと国内法人であろうと、配当所得として課税されてしまうのは前述したとおりですが、それは子会社政策などの配慮をする必要がないためだと思われます。
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