今回の記事は、上場会社の繰延税金資産の算定の際に留意する必要がある、法定実効税率についてです。安倍政権下の平成26年税制改正により、平成26年10月より開始する事業年度から、以下のように税制が変わります。
【改正点】
1.地方法人税の創設
平成26年の税制改正により、法人住民税の税源の一部が国税に移譲されることになりました。これを「法人地方税」と呼びます。国が徴収した法人地方税は、各地方自治体に再配分されるようです。
2.事業税所得割の引き上げ、地方法人特別税の引き下げ
平成26年の税制改正により、事業税の所得割の税率が引き上げられ、一方で事業税の地方法人特別税への配分率が引き下げられることになりました。
【実効税率の算定】
東京都にある上場会社(外形標準課税あり)の例をとって、以下、改正後の法定実行税率を算定してみたいと思います。
@ 法人税 : 25.5% → 25.5%
→ 変更なし
A 法人住民税(法人割) : 20.7% → 16.3%
→ 下げた分は地方法人税へ移譲
B 地方法人税 : 0% → 4.4%
→ 法人住民税法人割の下げ幅がそのまま移譲される
C 事業税所得割(標準税率) : 2.9% → 4.3%
→ 事業税所得割の税率アップ
D 事業税所得割(超過税率) : 3.26% → 4.66%
→ 同上
E 地方法人特別税 : 148.0% → 67.4%
→ 事業税の所得割が上がった分、こちらは下がる。
以上の税率を基に、具体的に計算式に当てはめてみます。上場会社を想定する場合、資本金1億円以上ということで、事業税率は「超過税率」の適用法人となります。
【計算式】
平成26年10月より開始する事業年度より適用される法定実効税率
={法人税率×(1+法人住民税率+地方法人税率)+事業税率(超過税率)+事業税率(標準税率)×地方法人特別税率}÷{1+事業税率(超過税率)+事業税率(標準税率)×地方法人特別税率}
={25.5%×(1+16.3%+4.4%)+4.66%+4.3%×67.4%}÷{1+4.66%+4.3%×67.4%}
=35.64%
ちなみに、従来の平成26年10月より開始する事業年度より適用される法定実効税率は、以下のように計算されていました。
法定実効税率
={法人税率×(1+法人住民税率)+事業税率(超過税率)}÷{1+事業税率(超過税率)}
={25.5%×(1+20.7%)+7.55%}÷{1+7.55%}
=35.64%
すなわち、平成26年税制改正基づく実効税率は、算定式の構造は変わったものの、税率そのものは「従来より変更なし」ということになります。
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