今年も確定申告の季節がやってまいりました。今回の記事では、医療費控除の対象にできる治療費についていくつか書いていきたいと思います。
医療費控除は、ザックリ言ってしまえば、年間で10万円以上医療費がかかった場合に、その10万円を超過した金額が、扶養控除などと同様に所得から控除できる制度です。
病院に支払った金額の他、薬局での薬代や、通院した際の交通費も控除の対象となりますので、今年は医療費が多くかかりそうだな、と思った年には、コマメに集計することをお勧めいたします。
(ただし、健康保険の一時金や医療保険の受取保険金が支給された場合は、入院等で支出した金額から保険等で受け取った金額を控除した差額で、10万円を超過したかどうかの判定を行います。)
この医療費控除の制度ですが、もともと治療費で苦しむ国民の皆様を救済するための制度なので、美容整形や植毛、高額な差し歯などの自由診療は、原則的に医療費控除の対象から除外されます。それらは救済する必要のない支出と考えられるからです。
ただし、以下のものは、医療費控除の対象となりますので、知っているかいないかで納税額が変わってきてしまいます。
【医療費控除の対象となるもの】
・禁煙治療代
→ 2006年より、一定の要件を満たした禁煙治療は医療費控除の対象となりました。
厚生労働省は、国全体の医療費負担を抑制するため、メタボ対策や禁煙治療の推進を行っておりますので、国の利害と合致するためです。「一定の要件」は以下のすべてを満たすことが必要となります。
(1) 患者自ら禁煙を望む場合であること。
(2) ニコチン依存症診断用のスクリーニングテスト(TDS)を行い、5点以上の診断をされた患者であること。
(3) 喫煙年数 × 1日の喫煙本数が、200本を超えること。
(4) 治療方法についての説明をうけ、治療に関する承諾書を記述すること。
・レーシック(視力回復レーザー手術)
レーシックとは、角膜にレーザーを照射して近視や乱視などを治療し、視力を矯正する手術のことです。
この手術は、眼の機能それ自体を医学的な方法で正常な状態に回復させるものであり、それに係る費用は医師の診療又は治療の対価と認められますので、医療費控除の対象となります。
・不妊治療
当局は、「医師による診療等の対価として支払われる不妊症の治療費及び人工授精の費用は、医療費控除の対象となる」という見解を示しております。少子化対策に頭を悩ませる国の政策と合致する見解であると言えるでしょう。
・ED治療
当局は、「医薬品として認可を受けたEDの治療薬は、医者の診察を受けて処方されたものに限り医療費控除を適用できる」という見解を示しております。つまり、バイアグラ、レビトラ、シアリス等の購入費については、医者から処方されたものに限って同控除を適用することが可能であり、医師による診察料も控除対象になります。ただし、個人輸入などで購入したものは控除の対象になりません。
・温泉療養費
温泉利用型健康増進施設で温泉療養を行った場合、交通費も含めてその費用は医療費控除の対象となります。温泉利用型健康増進施設とは、厚生労働省が定める一定の基準を満たし、温泉を利用した健康づくりを図ることができる施設のことをいいます。平成22年4月1日現在で全国に23施設あります。
認定施設一覧
→ http://www.onsen-nintei.jp/list/index.html
・眼鏡の購入費用
近視や遠視などのために日常生活の必要性に基づき購入されるものは、視力を回復させる治療の対価ではないので、医療費控除の対象とはなりません。
しかし、例えば、斜視、白内障、緑内障などで手術後の機能回復のため短期間装用するものや、幼児の未発達視力を向上させるために装着を要するための眼鏡などで、治療のために必要な眼鏡として医師の指示で装用するものは、医師による治療の一環として直接必要な費用ですので、医療費控除の対象となります。
【医療費控除を受ける上での留意点】
・贅沢な医療費
上記のように一般には医療費控除として認められるものであっても、一般的な相場と比較して「贅沢」と判断される医療費については、対象外となります。
・自家用車のガソリン代や駐車場代
通院費も医療費控除の対象となりますが、自家用車にかかる費用は対象外となります。
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