2013年11月19日

個人に適用されるタックスヘイブン税制


 タックスヘイブン対策税制とは、平たく言えば、日本法人等が税率の低い海外に子会社等を設立してその子会社に利益を「飛ばす」ような節税対策を取ったとしても、その子会社が実体を伴わない会社であれば、その海外子会社の利益にも日本の税率を適用する、という制度です。
 タックスヘイブン課税の適用から逃れるためには、その海外子会社が現地にて実体のあるビジネスを行い、その海外において純粋に利益を上げていることが必要です。
 また、たとえこの海外子会社に実態があったとしても、親子間取引を利用して、日本法人の利益を意図的に圧縮し、税率の低い海外子会社の利益を厚めに計上している場合は、「移転価格税制」の適用を受け、海外に逃がしたと考えられる利益の部分に日本の税率で課税されてしまいます。
(上記海外子会社を「特定外国子会社等」と言います。詳しい定義については、別記事「気を付けなければいけないタックスヘイブン対策税制」をご参照ください。)

 日本の税制は、このような対策をすることで海外子会社を利用した租税回避行為に注意を払っております。これらの話は、一見、法人間の取引において適用されるものであり、個人所得税には関係ないように思えます。
 確かに移転価格税制は、法人間の取引の話です。ただし、タックスヘイブン対策税制については、個人所得税にも適用があるので留意する必要があります。

 個人のタックスヘイブン対策税制では、タックスヘイブンと認定される税率の低い国において、
● 日本の居住者(または特殊関係非居住者)が外国法人の発行済株式の50%超を直接および間接的にを保有し、
● 居住者がその外国法人の発行済株式等の10%以上を直接、または間接的に保有している場合は、所得のうちその持株比率に対応した金額を、雑所得とみなして課税することとされています。
(ただし、四つある適用除外基準のすべてを満たしている場合、タックスヘイブン対策税制の適用はないこととされている点についても、法人の場合と同様です。詳しくは、別記事「気を付けなければいけないタックスヘイブン対策税制」をご参照ください。)

 なお、「居住者」と認定された場合に適用されるという点には注意が必要です。
 例えば、シンガポールに出国して「非居住者」となり、その地で会社を設立して株式ほか金融商品への投資・運用を行っていた方がいたとします。しかし、日本国内でPE(恒久的施設)を有するという認定を受けてしまうと、「居住者」扱いとなってしまいます。したがって、軽課税国であるシンガポールの法人の所得に対してタックスヘイブン対策税制が適用されてしまいます。

 なお、シンガポールでは国外所得免除方式を採用しており、タックスヘイブン対策税制もありませんから、シンガポールの居住者として正式に認定を受けた場合は、ケイマン諸島のオフショア法人を通じて株式ほか金融商品への投資・運用を行なっても課税されません。したがって、日本国内でのPE認定を受けないように細心の注意を払う必要があります。


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posted by ふみふみ at 15:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 国際税務を武器にする時代です | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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