独立起業して順調にお得意様が増えていくと、だんだん法人及び個人の金回りがよくなります。そうなってくると、サラリーマン時代には手が出せなかった高級スーツ・革靴・時計などをついつい買ってしまう方が多いようです。
スーツや革靴などはほぼ仕事でしか使わないのだからと、喜び勇んで経費で落としたくなりますが、残念ながらこれらのものは経費にならず、税務調査で否認されて追徴課税を食らうことになります。そこには、経費につけられない明確なロジックが存在し、ほとんど抵抗のしようがありません。
独立して会社を設立すると、経営者は役員報酬という形で給料を受け取ることになります。所得税法でいう「給与所得」というやつです。この給与所得をもとに個人の所得税が計算されるわけですが、給与収入と給与所得の違いを知らない方が意外に多いようです。
個人事業主は必要経費を付けられるのにサラリーマンが必要経費を付けられないのは不公平だという考えのもと、給与所得者の税率を計算する際はサラリーマンの給与収入に対して一定の掛け目を入れて減額し、それに所得税率を乗じます。この一定の掛け目を入れて減額されたものが「給与所得」なのです。
この減額の割合は国税庁のホームページも記載されていますが、例えば給与収入が500万円の場合、給与所得は346万円と計算されます。この差額の154万円の部分が、スーツや革靴などの必要経費を見込んだ減額部分です。
すなわち、最終的な個人の給与所得の計算で減額がされるにもかかわらず、さらにスーツ代や革靴代を会社の経費につけてしまうと、二重に経費を付けてしまっていることになるのです。
高級スーツや高級時計、高級靴などは、金額が張るので、経費として非常に魅力的であり(それゆえにすぐ発見されてしまうのですが。。。)、ついつい経費にしてしまいがちになりますが、将来的な税務調査が入った時の追徴課税は、否認される金額が高額である分、大きく跳ね返ってきます。
特に5年ぐらい遡及されてしまうと、過少申告加算税(10%か15%)や重加算税(35%)よりも、延滞税(14.6%×期間)の方がきつくのしかかってきます。奥様の買い物まで経費につけていた場合は、かなりの痛手をこうむります。
例えばついつい調子に乗って、毎月いろいろな個人的支出を経費に付けてしまい、月50万円の経費を重加算対象で5年間分否認されてしまったら、重加算税や延滞税込の追徴税額は1800万円を超えることになります。
結局、源泉税や住民税が増えるものの、役員報酬の金額を増額して、個人の預金で購入していた方が安全だったというケースは少なからずありますので、時には自重も必要かと思います。
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