以前の記事においても法人化のメリットをテーマとして取り上げ、節税についても触れさせていただきましたが、今回の記事では、具体的に「税率の分岐点」に焦点を絞って解説していきたいと思います。
日本では(大多数の国でそうですが)累進課税の制度を採用しているため、収入が増えるほど税率が段階的に上がってしまう仕組みになっております。一方で、法人税率について言いますと、所得(利益)が800万円までの中小法人でこそ軽減税率が設けられておりますが、原則として固定された税率です。したがって、事業が拡大して利益額が増えていく場合、どこかの段階で個人事業から法人成りした方が、納税額を抑えられることになります。これが、芸能人などの高額所得者の方々が法人を設立する理由です。
【個人事業の場合の所得税率】
まず、個人の所得税(復興所得税含む)については、以下のように段階的に税率が上がります。
● 195万円以下 5.105%
● 195万円超 330万円以下 10.210%
● 330万円超 695万円以下 20.420%
● 695万円超 900万円以下 23.483%
● 900万円超1800万円以下 33.693%
●1800万円超4000万円以下 40.840%
●4000万円超 45.945%
ちなみに、所得に一律10%の住民税も課されますので、住民税を加算しますと以下のようになります。
● 195万円以下 15.105%
● 195万円超 330万円以下 20.210%
● 330万円超 695万円以下 30.420%
● 695万円超 900万円以下 33.483%
● 900万円超1800万円以下 43.693%
●1800万円超4000万円以下 50.840%
●4000万円超 55.945%
結局、最高税率が約56%となります。なお所得が上がると健康保険料も上昇するので、実際の手取り額はさらに低くなることになります。
【法人の場合の実効税率】
次に、法人税率について考えます。ここでいう法人税率は中小法人の実効税率(法人税+法人住民税+法人事業税)のことです。
● 法人税率:
所得800万円以下の部分 15.0% (16.50%)
それ以外 25.5% (28.05%)
( )括弧書き:平成25年3月期から平成27年3月期は、復興特別法人税が加算され、1.1倍
● 法人住民税率:
東京都の場合、法人税額×20.7%
※ 均等割は除く。
● 事業税率:
所得400万円以下の部分 2.7% ×81% (2.95% ×81% )
所得800万円以下の部分 4.0% ×81% (4.365% ×81% )
所得800万円超の部分 5.3% ×81% (5.78% ×81% )
( )括弧書き:売上2億円以上もしくは所得が2500万円以上となった場合、超過税率加算
※ 81%:地方法人特別税率
以上を踏まえた中小法人の実効税率は以下の通りとなります(事業税の超過税率の場合を除く)。
所得400万円以下の部分 21.92% (23.35%)
所得800万円以下の部分 23.63% (25.03%)
所得800万円超の部分 36.84% (39.16%)
( )括弧書き:平成25年3月期から平成27年3月期は、復興特別法人税が加算される。
したがって、中小法人の場合は、所得が800万円を超えた場合こそ、約37%の税率ですが、800万円を超えないように上手くハンドリングすれば、23%台の税率で済むので非常に税率が安くなることになります。また、法人の所得が増える分には、社会保険料が増額されることはありません。
【法人化の分岐点】
以上により、以下の式が成立します。
所得330万円以下の所得税率(住民税含む) 20.21%
<
所得800万円までの法人実効税率 23.63%
<
所得330万円超の所得税率(住民税含む) 30.42%
もちろん、法人を設立するには登記費用が掛かりますし、設立後は均等割の7万円と税理士への申告依頼費用も掛かりますので、所得が330万円を超えてすぐ法人化した方が得というわけではありませんが、以外に低い水準の所得のうちから、法人化を検討する価値があることになります。
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