日に日に、国際的な租税回避行為に対する税務当局のマークがきつくなってきました。さる平成25年3月25日、武田薬品に対する大阪国税の過去最大規模の移転価格税制に関する課税処分(1223億円)が、国税不服審判所の裁決により取り消され、武田薬品の全面勝利とはなったものの、これはもともと大阪国税が無理目の課税処分を行ったからであり、国際税務における法の網は、年々着実に張られていく傾向にあります。
平成25年4月1日に開始する事業年度から、また一つ、国際税務における課税強化が行われました。以前の記事でも取り上げましたが、従来「過少資本税制」という制度があり、外国法人である親会社から借り入れをしている国内子会社においては、その親会社に対する支払利息の損金算入が制限される、という規定があります。これは、親会社が本来資本金として注入しなければいけない国内法人の運転資金を借入金として注入することにより、支払利息が計上される国内子会社では利益が圧縮され課税額も減少し、逆に親会社のある本国では受取利息が計上され課税額が増える、という「利益と納税額の移転」が行われることを防ぐためであります。 しかし、従来のやり方では、日本法人が親会社であり、外国法人が子会社である場合は、規制することができませんでした。
今回の改正では、外国子会社から日本の親会社が資金を借り入れた場合についても、その支払利息について損金算入が制限されることになりました。これを、以下、「過大支払利子税制」と言います。
【制度の概要】
所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことによる租税回避を防止するため、関連者への純支払利子等(以下「関連者純支払利子等」といいます。)の額が調整所得金額の50%を超える場合には、その超える部分の金額は損金不算入となる。
注1)関連者の範囲
・直接または間接的に、50%以上の持分関係があること
・実質的に支配、被支配の関係にある者
・上記2者による債務保証を受けている第三者等
注2)損金不算入額 = 純支払利子 − 調整所得金額 × 50%
注3)純支払利子 = 支払利子 − 受取利子
注4)調整所得金額 = 所得金額 + 純支払利子 + 減価償却費
+ 受取配当金益金不算入額 ± 特別の損益 など
【適用対象から除外される場合】
・その期の純支払利子が、1000万円以下であれば、本規定の適用はありません。
・関連者への支払利子額が総支払利子額の50%以下であれば、本規定の適用はありません。
⇒ なので、基本的には大企業を想定した制度であると言えます。
【他の規定との連携】
・連結納税を採用している場合は、連結グループを一体としてみなして適用対象かどうかを判定します。
・過少資本税制とダブルで対象となる場合は、損金不算入額が大きくなる方を採用します。
・タックスヘイブン税制とのダブル適用となる場合は、当該純支払利子の損金不算入額からタックスヘイブン税制の対象となる外国子会社の合算所得を控除するなどの調整を行います。
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