2013年01月09日

インドネシアの税制 〜 概観


 今回の記事では、インドネシアの税制の仕組み等を取りまとめてみました。皆様がインドネシアでのビジネス進出を検討する際の参考になれば幸いです。

【国の概観】
 インドネシアは、昔から石油や天然ガスの産出国として有名であるため、以前話題になったベトナム、最近話題になっているミャンマーなどに比較すると、古くから日本企業が進出しているようなイメージがあります。しかし、治安が安定しているとは言えない状況が長く続き、1997年にアジア通貨危機が起きたことによる政治の混乱もあったため、2004年にユドヨノ大統領がインドネシア史上初の直接選挙で大統領に就任するまでは、あまり企業の進出は進んでおりませんでした。ユドヨノ政権になってからは、外国企業の誘致をはじめとする経済施策を積極的に行っており、韓国、中国、日本などの企業も続々と進出しております。
 インドネシアが特に投資先として脚光を浴びている理由は、世界第4位の人口を有しているだけでなく、人口ピラミッドがきれいな形をしていること、すなわち若年層の人口が多いことにも起因しています。
 若年層の人口が多いということは、それだけ将来的な消費活動が期待できるということであり、小売業やサービス業、不動産投資などの事業にも多くのニーズがあるということを意味します。

【税制の特徴】
 インドネシアは、香港やシンガポールのようなタックスヘイブンではなく、日本やアメリカと似通った税制を採用しております。
 所得税(法人税含む)、付加価値税(消費税)、土地・建物税(固定資産税)、不動産取得税、印紙税など、税目も日本と似通ったものが中心となっております。また、住民税の制度もあります。

@ 個人所得税
 インドネシアでは、居住する意思があり、183日以上インドネシア国内に滞在し、定常的な住居を有する場合は、「居住者」として扱われます。これは、一瞬日本における居住者判定と似通っているように見受けられますが、日本の場合は「国内に住所を有し現在まで引き続き1年以上居所を有すること」という条件であり、微妙に違います。仮に住所は日本にあり、住居は両国にあり、インドネシアに183日以上滞在した場合は、両国で「居住者」判定を受けてしまいますので、注意が必要です。
 また、インドネシアでは、アメリカと同じく「全世界の所得」の申告が必要であり、インドネシアの居住者が海外で獲得した所得も申告の対象となります。
 所得税の計算方法について言えば、総所得金額から所得控除を差し引いた金額に税率を乗じることになるので、基本的には日本と変わりありません。日本との相違点としましては、
 ・宝くじの賞金 ⇒ 日本は非課税、インドネシアでは課税
 ・受取保険金 ⇒ 日本は課税、インドネシアでは非課税
 ・不動産賃貸収入による所得 ⇒ 日本では総合課税、インドネシアでは分離課税
などがあります。
 また、法人から株式配当を受け取る場合は、日本同様に、法人税課税済の配当を受け取った個人にも所得税が課せられることになるので、いわゆる二重課税となります。この点、株式配当を受け取った個人は非課税となるシンガポールとは大きく違う点です。
 税率は、5%、15%、25%、30%と4段階の累進課税であり、日本よりは最高税率が低く設定されております。
 
A 法人所得税
 法人税の制度も、日本とよく似ておりますが、例えば以下のような相違点があります。
 ・貸倒引当金は、銀行・リース業以外は認められていない。
 ・交際費は、日付・場所・業務との関係が記録されている限り、全額認められる。
 ・繰越欠損金の期限は、原則5年。欠損金の繰戻還付制度はなし。
 税率については、原則25%です。ただし、中小企業は48億ルピアまでの課税所得の税率が半額になります。また、株式が一定以上分散している上場企業については、課税所得1億ルピア超の税率が5%引き下げられます。
 予定納税は、前年度の所得税総額をベースに12分割した金額を毎月納付します。本決算の確定申告は決算日以後4カ月以内に行います。

B 付加価値税(消費税)
 日本の制度との主な相違点は、以下の通りです。
 ・税率は原則10%
 ・小規模売上高による免税の特例は、年間6億ルピア以下
 ・生活必需品(米・食塩・トウモロコシ・大豆など)は非課税
 ・ホテル、レストラン、屋台などで提供される飲食物は非課税
 ・郵便切手は非課税
 ・芸術、エンターテインメント、放送、ホテル、駐車場、フードケータリングなどのサービスが非課税
 ・納付は、毎月計算して翌月末までに行う。

C 奢侈品販売税
 いわゆる高級品には、付加価値税の発展形として10〜75%の税金が課せられます。自動車や二輪車などがその代表です。

D 相続税・贈与税
 インドネシアには、相続税・贈与税の制度がありません。

【会計監査制度】
 インドネシアでは、外資系企業は規模に関わらず、原則会計監査を受けなければならず、会計監査人はインドネシア国の公認会計士でなければなりません。
 会計制度は、国際会計基準に準拠して整備されております。上場会社は当然財務諸表の開示義務がありますが、非公開会社の場合であっても会社法に従い財務諸表を作成することになり、日本の会社法と似ております。相違点としましては、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表のほか、キャッシュフロー計算書も作成義務がありますので、留意が必要です。

【ファンドスキームの導入】
 インドネシアの会社法では、日本の商法でいう匿名組合の仕組みが規定されておりません。課税をパススルー仕組みを考えてみたのですが、今のところ法律が整っていないようです。

【まとめ】
 インドネシアは、税制や会計制度、会社法の仕組みがほぼ日本と似通っており、税率は日本よりも10%ぐらい安いようなイメージです。ただし、法人税の予定納付や消費税の納付は毎月発生するので、資金繰り上は日本よりも早めに税金がキャッシュアウトしていきます。
 そうは言っても、若年層の人口が多い魅力的な市場であるため、進出する価値は大いにあるものと考えます。


参考になるサイト:
 ジェトロ http://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/invest_04/


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posted by ふみふみ at 15:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 国際税務を武器にする時代です | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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