2012年11月29日

合併A:合併スケジュール


 今回の記事では、通常の吸収合併の場合のスケジュールについて説明させていただきたいと思います。
 会社の合併は、会社法に定める条文の規定に則って行われ、法的に成立させるためには会社法の要件を全て充足する必要があります。なお、寡占市場において大企業同士が合併をしようとする場合には、独占禁止法についても留意する必要があります。独占禁止法が「公正かつ自由な競争」を実質的に制限することになる合併を制限しており、公正取引委員会の認可が必要になります。最近でいえば、合併ではないのですが、ヤマダ電機がベスト電器を子会社化することについて、公正取引委員会の審査結果でOKでましたね。

 さて、株式会社間の吸収合併は、以下の手続を経て行われます。

@ 水面下での合併の交渉で、ある程度の合意が成立

A 吸収合併契約の締結

B 吸収合併契約等に関する書面等の備置き及び閲覧等
 (消滅会社:会社法782条、存続会社会社法794条)

C 株主総会の承認
 (消滅会社:会社法783条、存続会社:会社法795条)

D 株主・登録株式質権者・新株予約権者への通知又は公告
 (消滅会社:785条、存続会社:会社法797条)

E 債権者に対する官報公告、会社が把握している債権者に対する個別催告通知
 (消滅会社:会社法789条、存続会社:会社法799条)

F 異議を述べた債権者又は反対株主等に対する対応(株式買取、弁済等)
 (消滅会社:会社法787条〜789条、存続会社:会社法797条〜799条)

G 合併の効力発生

H 存続会社の変更登記及び消滅会社の解散登記申請

I 事後開示書面の備置
 (消滅会社:会社法791条、存続会社:会社法801条)

 これらの一連の手続きは、合併比率などの交渉期間を除いたとしても、2〜3カ月はかかります。上記の公告期間を1カ月見なければいけないことも一因ですが、それ以外に取引先対応、従業員への説明、合併後の社名、ロゴ、ホームページ、システムなど、決めなければいけない事象が多岐にわたることにも起因します。
 あと、実務的には、E債権者に対する個別催告で、どの程度の債権者にまで通知すべきかが議論になります。融資を受けている銀行やメインとなる仕入れ先などは当然ですが、例えばアスクルから事務用品を月1万円程度購入しているとして、そのレベルの未払金の債権者にまで個別催告するとなると通知先が膨大になってしまいますので、省略されるケースが多いようです。

 なお、この一般的な合併スケジュールの例外として、簡易合併及び略式合併があります。両者については、次回以降の記事で開設していきたいと思います。


<<<「組織再編をもっと身近で活用しましょう」の記事一覧 へ戻る

   <<< 「ブログの目次」 へ戻る




この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック