定款作成時に最初に記載するのは、商号つまり会社名ですが、このとき一緒に英文社名も決めて記載しておくと意外な時に役立ちます。
最近では、大手企業や海外拠点をもつ企業のみならず、設立したばかりの小さな国内法人でもひょんなことから海外取引をする機会が増えております。例えば弊事務所のお客様の例では、国内の会社と取引しているつもりが、突然、今回は海外の業者から直接海外送金で入金しますので英文社名を教えて下さいなどと言われたこともありますし、海外の会社と取引を行う際に登記簿を英文に訳して提出してほしいなどと言われることも頻繁にございます。
このような時に慌てて英文社名を考えるよりも、設立登記の際に英文社名をあらかじめ決めておいて、定款と登記簿謄本に記載して置けば、いざという時に慌てずに済みます。むしろ、今の時代では当たり前。くらいに考えておいたほうがいいでしょう。いろいろな企業のホームページを見ると英文社名を会社概要に記載している会社も多くなってきました。
さて、英文社名はどのように決めるといいのでしょうか?
特に決まりごとはないのですが、日本の株式会社や有限会社のように決まりきった表記はありません。代表的な例をあげると以下のようになります。
1. 「Co.,Ltd.」
日本で古くから使われている英文社名です。カンパニー・リミテッド(有限責任の会社という意味)の略ですが、英国や米国ではあまり使われていないようです。そのためか、最近では採用する会社も減少傾向にあるようですが、依然、日本では英文社名として最も多く存在しているものであります。
【会社名の例】(ホームページに記載のもの)
セメダイン株式会社 「CEMEDAINE Co.,Ltd.」
大和ハウス工業株式会社 「DAIWA HOUSE INDUSTRY CO.LTD」
2. 「Corp.」
2番目に多く使われている英文社名です。コーポレーションといえば、なじみ深いですね。米国登記では、「Corp.」と表記することが認められているため、多く使われているようです。組織が整った大企業が使うことが多いそうです。
【会社名の例】(ホームページに記載のもの)
丸紅株式会社 「Marubeni Corporation」
ソフトバンク株式会社 「SOFTBANK CORP.」
3. 「Inc.」
3番目に多く使われている英文社名です。インコーポレーテッド(登記済みの会社)のことで、英国(英国では、Inc.Ltd.となる)、米国ともによく使われている表記です。会社の規模に関係なくどの会社が使用しても違和感がありません。
【会社名の例】(ホームページに記載のもの)
キャノン株式会社 「Canon Inc.」
株式会社中央経済社 「CHUOKEZAI−SHA,Inc.」
4. 「Ltd.」
Inc.と同じくらい使われている英文社名です。英国登記の会社は、Limitedが必ず入れる必要があるので世界的にみて一番無難な選択肢かもしれません。
【会社名の例】(ホームページに記載のもの)
アサヒビール株式会社 「ASAHI BREWERIES,LTD.」
富士通株式会社 「FUJITSU LIMITED」
5. 「K.K.」
日本の会社でしか使われていない英文社名です。カブシキカイシャをそのままK.K.と表記しているので、あまり使われてはいないようですが、日本の会社ということを世界に示すにはわかりやすいのかもしれません。
【会社名の例】(ホームページに記載のもの)
昭和シェル石油株式会社 「SHOWA SHELL SEKIYU K.K.」
日本郵船株式会社 「Nippon Yusen Kabushiki Kaisha(NYK LINE)」
有名企業の英文社名を例にあげてみましたが、表記の仕方は実に様々です。
決まりごとがないので、英文にした時の「ひびき」や「イメージ」で決めてみてもいいかもしれません。
余談ですが、ユニクロの英文表記は、最初は「UNICLO」(UniqueなClothの意味)だったのですが、海外の取引先が間違って「UNIQLO」と記載してきたのを気に入ったのでそちらに変更したと、柳井正さんの著作に書いておりました。そういうのも面白いお話ですよね。
<<< 「起業・設立の豆知識」の記事一覧へ戻る
<<< 「ブログの目次」 へ戻る