収益不動産を購入する場合、特に予備知識のない初期の段階では、個人所有にしてしまい、不動産所得として税金を申告する方が多いようです。ただし、不動産は法人で所有した方が有利であり、以下のメリットがあります。
1.建物、構築物、什器備品の減価償却
個人は、税法の耐用年数により強制償却です。法人は、税法の耐用年数の償却限度額の範囲であれば、計上額を減らすこと、減価償却を計上しないことも可能です。
例えば、耐用年数22年経過した中古の木造を取得しますと、中古耐用年数は4年と計算され、最初の4年間のみ多額の減価償却が発生することになります。その一方で、取得初年度は不動産取得税や登記費用など、多額に費用が発生するので、どのみち赤字になります。なので、減価償却費の計上額を調整できる法人の方が都合がよいことになります。
2.繰越欠損金の使用期間と土地利息部分の損失の取り扱い
法人において繰越欠損金が発生した場合、その翌期以降9年間は利益と相殺することが可能です。ただし、個人の場合は、損失の繰越期間は3年と短いので、例えば上記のような4年で強制償却の木造を取得した場合は、黒字化するのが5年目以降になってしまうので、1年目に発生した繰越欠損金が切り捨てになってしまい、その分税務上は不利益が生じます。
3.個人の場合の損益通算
個人の不動産所得は、事業所得や給与所得と損益通算することが可能です。ただし、費用の多くを占める土地部分の支払利息は、損益通算の際に対象から除かれます。そうなると不動産所得において赤字を出したとしても、事業所得や給与所得と相殺することは、なかなかハードルが高いことになります。
4.法人の税率
個人だと累進課税制度ですので、通常の給与所得や事業所得に不動産所得が上乗せされた場合、すぐに最高税率に到達する可能性があります。年間所得が1800万円を超えた場合、所得税率は40%ですが、それに住民税等を追加するとさらに税率が高いことになります。
一方、法人所有の場合、年間所得が800万円までは、実効税率が25%ほどです。アパートを数棟所有する場合、法人を複数に分けて、それぞれの法人の年間所得を800万円以下になるように調整すれば、個人所得よりも税率を低くすることが可能になります。
なお、法人で所有する場合、団信すなわち団体生命信用保険は付けることはできません。ただし、団信を付けるとローンの利率が上がる金融機関が多いことと、健康診断の状況次第ではもともと団信が付けられない方もいらっしゃると思いますので、あまり気にしなくてもよいと私は思っております。
金融機関によって、個人所有しか認めないところと、法人所有も認めるところがありますので、ローンの依頼をする場合は、ぜひ金融機関にご相談をいただければと存じます。
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