外国に進出している企業もしくは海外に移住した個人が、現地国で課税対象となるのか、それとも日本国内税率で課税されてしまうのかに関しては、原則として「PE(恒久的施設)が存在するかどうか」という点で判定されます。国際税務においては「恒久的施設がなければ課税なし」という大原則があります。逆に言えば、日本国内にPE(恒久的施設)があると認定されてしまえば、海外の低い税率を享受することはできず、日本の税率で追徴課税されてしまうということです。それでは、PEとはどのように定義されるのでしょうか。
【法人税におけるPE(恒久的施設)の定義】
PEとは、一般に、「事業を行う一定の場所であって、企業がその事業の全部または一部を行っている場所」と定義されます。恒久的施設の範囲は、日本国内法、租税条約およびOECDモデル条約にそれぞれ規定がありますが、例えば国内法においては次の3つに区分されています(法人税法141条、法人税法施行令185条、186条、所得税法164条、所得税法施行令289条、290条)。
● 1号PE(支店PE)
@ 支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫
A 鉱山・採石場等天然資源を採取する場所
B その他これに準ずる場所(ホテルの一室を事務所とする、展示即売場など)
ただし、資産の購入や保管のために使用する場所、あるいは広告、宣伝、情報の提供、市場調査、基礎的研究等、その事業の遂行にとって補助的な機能を有する活動を行うためにのみ使用する場所はPEに含まれないこととされています。販売を伴う場合は、PEとみなされる傾向があります。
⇒ すべての国内源泉所得が総合課税の対象となる。
● 2号PE(建設PE)
建設、据付け、組立て等の作業、またはその指揮監督の役務の提供を「1年」を超えて行う場合のその場所。
⇒ 1号所得から3号所得までは総合課税、4号所得以下の国内において行う事業所得については源泉徴収のうえ総合課税、国外所得は源泉分離課税で終了。
● 3号PE(代理人PE)
国内に自己のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、
@ これを常習的に行使する者
A 商品等の資産を保管し顧客への引き渡しを行う者
B あるいは注文の取得、協議等の重要な部分をする者。
ただし、代理人等がその事業に関わる業務を独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等は除かれます。
⇒ 1号所得から3号所得までは総合課税、4号所得以下の国内において行う事業所得については源泉徴収のうえ総合課税、国外所得は源泉分離課税で終了(2号PEと同じ)。
● 4号PE(PEのない非居住者)
事業所得(1号所得のうちの一つ)は非課税、資産所得等(事業所得以外の1号所得)は総合課税、2号所得及び3号所得は源泉徴収のうえ総合課税、4号所得以下は源泉分離課税で終了。
【所得の種類】
上記で「●号所得」という表現が出てまいりますが、所得の種類が以下のとおり規定されてますので、こちらをご参照ください。
1号所得:事業所得、資産運用所得、組合契約事業利益の配分、
資産譲渡所得
2号所得:人的役務の提供事業の対価(芸能人、スポーツ選手、士業、
科学技術を有する者など)
3号所得:不動産の賃貸料等
4号所得:利子所得
5号所得:配当所得
6号所得:貸付金の利子
7号所得:使用料(ロイヤリティ)
8号所得:給与、報酬、年金、退職手当
9号所得:広告宣伝のための賞金
10号所得:生命保険契約等に基づく年金等
11号所得:定期積金の給付補填金
12号所得:匿名組合契約に基づく利益の配分
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