海外支店の所得に課税されたり、海外からの収入に源泉控除がされて送金されてきた場合など、所得の源泉地国と企業の居住地国の課税権とが競合する時、国際的に二重課税の問題が生じます。
このように国際的二重課税が生じた場合、日本の税法では、日本国内で課税される法人税額から上記の海外で課税された金額を控除する方法によって、二重課税を是正するようにしております。これがいわゆる外国税額控除という方法です。
【外国税額控除限度額の計算】
外国税額の控除限度額は、当期の所得に対する法人税額のうち国外所得に係る金額に相当する金額とされますから、次のような算式で計算されます。
当期の所得に対する法人税額 × 当期の国外所得金額 / 当期の所得金額 = 外国税額の控除限度額
なお、法人住民税についても同様の外国税額控除の規定があります。
【外国税額控除の適用時期】
外国税額控除は、法人が外国法人税を納付することとなった日(納付確定日)の属する事業年度に適用されることとされています。したがって、所得の「発生」の時期とその所得に対する税額の「確定」の時期が必ずしも一致するとは限りません。この場合、上記の計算式における「国外所得」と控除の対象とされる「外国法人税額」とは必ずしも期間的に対応するとはいえません。
納付確定日は、課税方式の違いにより以下のように分類されます。
1) 申告納税方式により課される外国法人税
納税申告書を提出した日。ただし、更正又は決定にかかる税額については、その更正又は決定の通知があった日
2) 賦課課税方式により課される外国法人税
賦課決定の通知があった日
3) 源泉徴収方式により課される外国法人税
その源泉徴収の対象となった利子、配当、ロイヤルティなどの支払が行われた日
【外国税額控除の対象となる租税】
イ.原則
外国税額控除の対象とされるのは、わが国の法人税・所得税のようにその国の法令によって「所得」を課税標準として課される租税です。
ロ.高率負担部分の除外
外国法人税であっても、控除対象とされる部分については、次のような制限が設けられています。
(イ) 原則的計算
外国法人税の額のうち税率が50%を超える部分の金額は、外国税額控除の対象から除外されます。
(ロ) 利子等に対する外国源泉税の特例
利子等(公社債及び預貯金の利子、合同運用信託及び公社債投資信託の収益の分配及び貸付金その他これに準ずるものの利子)に対して10%の税率を超えて課税された場合に限り、その10%を超える部分は原則として外国税額控除の対象から除外されます。
ただし、この利子の控除は、所得率( 外国税額控除の対象から除外される金額)によって以下のようになります。
10%以下 10%を超えて課税された部分
10%超20%以下 15%超えて課税された部分
20%超 なし
【国外所得金額の計算】
国外所得金額とは、国内所得金額以外のすべての所得金額をいいます。しかし、外国法人税が課されない国外所得金額については、その3分の2の金額を外国税額控除算定上、国外所得金額から控除します。
(ただし、法人の所得の90%までが限度となります。また、国外の事業所等の使用人数の占める割合(国外使用人割合といいます)が90%を超える場合には、その法人の所得金額に国外使用人割合を乗じた金額が限度となります)。
また、この計算に当たり、国外業務に直接要する販売費及び一般管理費は国外所得から直接控除することができます。国内業務と国外業務に同時に共通して発生する費用はその法人の業務の内容、費用の性質に照らして合理的な基準(収入金額、資産の価額、使用人の数等)により国外所得に配賦します。
【棚卸資産を譲渡する場合の措置】
棚卸資産の譲渡が国外の事業所(PE)等を通じて行われた場合:
⇒ その棚卸資産は国外で譲渡されたものとみなします。
棚卸資産の譲渡が国外事業所等を通じて行われなかった場合:
⇒ 国内源泉所得とされますが、その譲渡によって生ずる所得について外国法人税が課される場合に限り、 国外所得として選択することができます。
【金銭の貸付け、投資等】
国外の者に対する金銭の貸付け及び外国への投資等の行為によって生ずる所得は国外所得とされます。
【控除限度超過額及び控除余裕額の繰越制度】
外国法人税の納付と外国税額控除の時期のズレを調整するため、外国税額控除限度超過額及び外国税額控除余裕額については、翌期以降3年間の繰越しを行うことができます。
なお、外国税額控除は国税のほか地方税にも認められておりますので、外国税額控除限度超過額は外国法人税の額が国税の控除限度額と地方税の控除限度額の合計額を超える場合に算出されます。
その一方で、外国税額控除余裕額は外国法人税の額が控除限度額に満たない場合に算出され、国税の控除余裕額と地方税の控除余裕額に分類され、さらに、地方税の控除余裕額は道府県民税に係るものと市町村民税に係るものに分けられます。
<<<「国際税務を武器にする時代です」の記事一覧 へ戻る
<<< 「ブログの目次」 へ戻る