2014年10月01日

種類株式よりも簡単な方法 〜 属人的定め


 平成18年の会社法制定により、「種類株式」の発行が可能になったことについては、ご存知の方が多いものと思われます。

 通常の会社であれば、「普通株式」しか発行していないケースがほとんどでしょう。普通株式の場合、会社法の大前提である「株主平等の原則」が常に付きまとうため、所有株数に応じて配当の金額や議決権は平等に配分するしかありません。

 「種類株式」は、この「株主平等の原則」の例外的な規定です。例えば、「普通株式の2倍の議決権を有するが配当は普通株式と同等」の株式を発行したり、「議決権は普通株式の2分の1だけど、配当は2倍もらえる株式」などを発行することにより、議決権を優先したい株主と配当を優先したい株主の双方のニーズを調整することが可能になるのです。また、ベンチャーキャピタルがベンチャー企業に投資する際には、議決権と配当の権利の両方を強化した種類株式の発行を要求するケースもあります。

 さて、ここで、とある非上場のオーナー企業があるとします。そのオーナー社長は、相続対策のために後継者である子供に株式は移譲していくものの、「引き続き議決権は優先的に行使したい」と思うこともあれば、「引き続き配当は優先的に受け取りたい」と思うこともあるでしょう。この場合、上記のような種類株式を発行する方法しかないのでしょうか。

 会社法では、もっと簡単な方法が規定されています。それが「属人的定め」と呼ばれるものです(会社法第109条第2項)。

 これは、以下の3つの権利に限定して、株主ごとに異なる内容を定めることができるというものです。
 ・ 株主総会における議決権
 ・ 剰余金配当を受け取る権利
 ・ 解散時に残余財産の分配を受け取る権利

 この方法がお手軽なのは、手許にある定款の条文を変更するだけでよく、種類株式のような登記が必要ないという点です。ワードファイルの定款を変更して捺印製本するだけで(正確には株主総会を開催し4分の3以上の同意を得て定款変更する旨を記載した議事録も必要)、例えばオーナー社長が配当のほとんどを受け取り、後継者にはほとんど配当をしない、という仕組みを設計することができるのです。
 もちろん、配当に差異をつけるだけでなく、議決権に差異をつけることも可能です。

 種類株式の場合は、その同じ種類株式を所有している者同士では平等に扱われることになりますが、属人的な定めについては、株式の権利内容を完全に「人」に帰属させることになるため、その株主個人の実情に合った定めをすることができます。

 「属人的定め」に関するその他の留意点は以下の通りです。

@ 非公開会社(株式に譲渡制限がある会社)のみで導入することが可能な制度である。
→ 上場会社など、株式の譲渡制限がついていない会社では導入不可(種類株式は、公開会社でも導入可能)。

A 導入にあたっては、総株主の過半数が出席した株主総会において、4分の3以上の同意が必要。
→ 種類株式の導入は、出席株主の3分の2以上の同意でよい。

B 剰余金の配当、残余財産の配当を全く与えない旨を定めることはできない(会社法105条第2項)。
→ あくまで優劣をつけるのみ。

C 属人的な定めのある株主が、株式の全部譲渡を行った場合、譲渡制限会社で譲渡決議をすると同時に定款変更を行い、その譲渡株主に関する属人的定めを廃止し、新たに譲り受けた株主に属人的定めを設定するのか、検討する必要がある。
→ 種類株式の場合は、株式に権利設定がついて回るため、株式の譲渡があった場合は自動的に譲り受け株主が同等の権利を行使できることになります。

D 属人的な定めのある株主に相続が発生した場合、相続人に権利設定が引き継がれるかどうか、会社法で規定がありません。
→ トラブルを避けるためには、相続が発生した場合の取り扱いも定款で定めておいたほうがよろしいかと思われます。

 以上、オーナー企業とその後継者という事業承継で活用する事例で説明させていただきましたが、例えば数名のコアメンバーで共同出資、共同経営している会社の場合において、出資額は同額だが配当には濃淡をつけたい、といったケースにも活用可能かと存じます。

 あまり一般的には知られていない制度ですが、利用価値はいろいろありそうです。

 
 
 
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posted by ふみふみ at 13:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 相続対策と事業承継 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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