2014年10月08日

投資不動産を購入した際に消費税の還付を受ける方法


 以前、投資不動産を購入する目的で法人を設立する際は、以下のような手法で消費税の還付を受けるケースが多く見受けられました。

@ 法人設立時に「消費税課税事業者選択届出書」を提出して、第1期、第2期は「課税事業者」となる。
A 第1期は、自販機売上などの「課税売上」を、あらかじめ仕込んでおく。
B 第1期終了直前に不動産を購入し、賃貸収入の「非課税売上」がまだ発生しない状態で、第1期の決算を締める。
C 第1期の消費税申告の際に、「課税売上100%」の事業者として、建物部分の仕入消費税について全額還付を受ける。
D 第2期以降は、少額の自販機「課税売上」と多額の賃貸収入「非課税売上」で構成される法人となる。
E 第2期の決算日が到来する前に、課税売上1000万円以下の免税特典を受けるため「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出し、第3期以降は免税事業者となる。

 この第3期において消費税の免税事業者となることが重要です。なぜなら、消費税法には、「調整対象固定資産(棚卸資産以外で100万円以上のもの)の調整計算」という厄介な制度があり、第1期においてほとんどが課税売上で構成されているのにもかかわらず、第3期においてほとんどが非課税売上で構成されている会社に変貌した場合、第1期に受けた消費税の還付を第3期で返還しなければならなくなるからです。第3期で免税事業者となっていれば、そもそも消費税の申告を行わなくなるため、この還付金の返還をやり過ごすことができるのです。

 しかし、この手法があまりにも流行ったため、税務当局は平成22年度の税制改正で以下の規制を設けてきました。

『課税事業者を選択した2年間、または1000万円以上の資本金で新設された法人の当初2年間において調整対象固定資産を取得した場合には、その取得があった課税期間を含む3年間は引き続き「事業者免税点制度」を適用しない。この間、簡易課税制度の適用も受けられない。』

 この「事業者免税点制度」を適用しないということは、課税売上が1000万円以下であっても、「消費税課税事業者選択不適用届出書」が提出できない、ということです。したがって、せっかく第1期で還付を受けた消費税も第3期において返還することになってしまいます。

 この制度改正により、もう自販機売上を利用した消費税還付はできなくなったかのように思われました。しかし、この法律を逆手にとった手法が現れました。

 それは、「課税事業者を選択した2年間、もしくは1000万円以上の資本金で新設された法人の当初2年間」を経過後に、投資不動産を取得することで、上記規定の適用除外とする手法です。この場合、法人を新設し、最初に「消費税課税事業者選択届出書」を提出してから2年間、法人を休眠のまま寝かせます。そして、3期目になってから初めて、投資不動産の取得に動いて消費税還付を受けるのです。弊事務所では、この法人を「ビンテージもの」と呼んでおります。

 この方法の欠点は、2年先行して法人を設立するのでその期間も法人税申告や均等割の納付が発生すること、3年目のタイミングで買いたい投資不動産が見つかるとは限らないこと、法人を寝かせている間に消費税法の改正があって、この手法すら封じ込められる可能性があること、などです。

 ビンテージ会社を仕込んでいる方々が周りに数名いらっしゃいますが、法改正があってこの手法が使えなくなってもそれはそれでしょうがない、と割り切って設立されておられるようです。

 以上ですが、この手法にご興味のある方は、ぜひ弊事務所にご相談いただければと存じます。


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2014年10月01日

種類株式よりも簡単な方法 〜 属人的定め


 平成18年の会社法制定により、「種類株式」の発行が可能になったことについては、ご存知の方が多いものと思われます。

 通常の会社であれば、「普通株式」しか発行していないケースがほとんどでしょう。普通株式の場合、会社法の大前提である「株主平等の原則」が常に付きまとうため、所有株数に応じて配当の金額や議決権は平等に配分するしかありません。

 「種類株式」は、この「株主平等の原則」の例外的な規定です。例えば、「普通株式の2倍の議決権を有するが配当は普通株式と同等」の株式を発行したり、「議決権は普通株式の2分の1だけど、配当は2倍もらえる株式」などを発行することにより、議決権を優先したい株主と配当を優先したい株主の双方のニーズを調整することが可能になるのです。また、ベンチャーキャピタルがベンチャー企業に投資する際には、議決権と配当の権利の両方を強化した種類株式の発行を要求するケースもあります。

 さて、ここで、とある非上場のオーナー企業があるとします。そのオーナー社長は、相続対策のために後継者である子供に株式は移譲していくものの、「引き続き議決権は優先的に行使したい」と思うこともあれば、「引き続き配当は優先的に受け取りたい」と思うこともあるでしょう。この場合、上記のような種類株式を発行する方法しかないのでしょうか。

 会社法では、もっと簡単な方法が規定されています。それが「属人的定め」と呼ばれるものです(会社法第109条第2項)。

 これは、以下の3つの権利に限定して、株主ごとに異なる内容を定めることができるというものです。
 ・ 株主総会における議決権
 ・ 剰余金配当を受け取る権利
 ・ 解散時に残余財産の分配を受け取る権利

 この方法がお手軽なのは、手許にある定款の条文を変更するだけでよく、種類株式のような登記が必要ないという点です。ワードファイルの定款を変更して捺印製本するだけで(正確には株主総会を開催し4分の3以上の同意を得て定款変更する旨を記載した議事録も必要)、例えばオーナー社長が配当のほとんどを受け取り、後継者にはほとんど配当をしない、という仕組みを設計することができるのです。
 もちろん、配当に差異をつけるだけでなく、議決権に差異をつけることも可能です。

 種類株式の場合は、その同じ種類株式を所有している者同士では平等に扱われることになりますが、属人的な定めについては、株式の権利内容を完全に「人」に帰属させることになるため、その株主個人の実情に合った定めをすることができます。

 「属人的定め」に関するその他の留意点は以下の通りです。

@ 非公開会社(株式に譲渡制限がある会社)のみで導入することが可能な制度である。
→ 上場会社など、株式の譲渡制限がついていない会社では導入不可(種類株式は、公開会社でも導入可能)。

A 導入にあたっては、総株主の過半数が出席した株主総会において、4分の3以上の同意が必要。
→ 種類株式の導入は、出席株主の3分の2以上の同意でよい。

B 剰余金の配当、残余財産の配当を全く与えない旨を定めることはできない(会社法105条第2項)。
→ あくまで優劣をつけるのみ。

C 属人的な定めのある株主が、株式の全部譲渡を行った場合、譲渡制限会社で譲渡決議をすると同時に定款変更を行い、その譲渡株主に関する属人的定めを廃止し、新たに譲り受けた株主に属人的定めを設定するのか、検討する必要がある。
→ 種類株式の場合は、株式に権利設定がついて回るため、株式の譲渡があった場合は自動的に譲り受け株主が同等の権利を行使できることになります。

D 属人的な定めのある株主に相続が発生した場合、相続人に権利設定が引き継がれるかどうか、会社法で規定がありません。
→ トラブルを避けるためには、相続が発生した場合の取り扱いも定款で定めておいたほうがよろしいかと思われます。

 以上、オーナー企業とその後継者という事業承継で活用する事例で説明させていただきましたが、例えば数名のコアメンバーで共同出資、共同経営している会社の場合において、出資額は同額だが配当には濃淡をつけたい、といったケースにも活用可能かと存じます。

 あまり一般的には知られていない制度ですが、利用価値はいろいろありそうです。

 
 
 
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posted by ふみふみ at 13:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 相続対策と事業承継 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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