2013年10月24日

非上場株式の評価@ 〜 株価を半額にできる配当還元方式


 今回の記事も含め、非上場株式の評価手法について、いくつか解説していきたいと思います。
 基本的には、以下のような図式が成り立ちます。

● 上場会社の株式 → 株価市場の株価
● 非上場会社の株式 → B/S(貸借対照表)の純資産価額 ÷ 発行済株式数(いわゆる1株当たり純資産法)

 上場会社の株式の場合、M&Aが行われる際などに、適正株価の問題が出てきますが、市場の値段が厳然と存在しているので、市場株価とそれほど乖離させることはできません。過去の3カ月平均や6カ月平均を採用するなどして、市場株価の9掛けぐらいで合意するのが一般的です。
 
 ただし、非上場株式の公正価値の評価については、いくつかの手法が存在し、場合によっては1株当たりの純資産価額よりも、株価を高く評価したり、低く評価したりすることが可能となります。

● 株式を高く評価したい場合
 一般的に、ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法が使用されます。これは企業将来の収益獲得能力を現在価値に置き換えて会社の価値を評価する手法です。具体的には、
(1)評価の対象となる会社の事業計画を入手し、その事業計画に基づき、各将来事業年度で生み出される将来収益(キャッシュ・フロー)を予測する。
(2)各将来事業年度の将来収益を現在価値に割り引く(ディスカウント)。
(3)将来収益の現在価値に、現預金などの余剰資産を加算し、有利子負債を控除して株主価値を算出する。
(4)株主価値 ÷ 発行済株式数 = 1株当たりの株式価値

 この手法ですが、まず将来的な事業利益を予想するところがポイントです。それを作成すること自体が手間であり、IPOを目指す会社でもない限り、通常の非上場会社ではなかなか作成していないものと思われます。
 また、将来的な予想収益が巨額であるほど高額の評価で算定されるため、現状の損益と将来的な予想収益に大きな乖離がある場合は、その理由づけに正当性があるかどうかが問題となります。
 また、現在価値の割引の際に使用される各指標(資本リスクプレミアム・β値・サイズリスクプレミアムなど)の適正性についても、採用される数値によって計算結果が変わるので問題となる場合があります。
 DCF法は、IPO途上の会社が第三者から資本を調達する場合や、M&Aが行われる場合など、株式を高めに評価するニーズがある場合に使用される傾向があります。

● 株式を低めに評価したい場合
 類似業種比準方式、もしくは配当還元法を使用することにより、概して株価が低めになる傾向があります。
 類似業種比準方式は、主に主要株主が所有する株式を評価する場合、配当還元方式は少数株主が所有する株式を評価する場合に使用される手法です。

 @ 類似業種比準方式
   複雑ですので、別記事にて詳しく解説したいと思います。

 A 配当還元法
  この評価方法は、あくまで特例です。
  少数株主の場合、原則会社を支配していないので、所有株式には「配当の期待」価値ぐらいしかありません。なので、例外的に株価を以下の計算式で計算します。
 
 1株あたり資本金額 × 配当率(%)/10%

 つまり、もしとある少数株主が100万円で出資した場合で、毎年の配当が10万円ずつであれば、株式の価値は当初の取得価額と同額の100万円になります。配当率が10%よりも大きい場合は価値が上がり、少ない場合は価値が下がります。
 ところで、ベンチャー企業や中小法人などでは、過去に一度も配当をしたことがない会社が数多く存在します。その場合はどうなるのでしょうか?
 配当率が5%以下の場合(無配を含む)は、一律5%配当とみなして評価します。すなわち、前述の例でいうと、無配の場合は、100万円の半額の50万円として評価されます。なので、当初の出資額の半額の評価とすることが可能なのです。税法における配当還元法の採用条件ですが、会社の規模などは関係ありません。同族株主以外の者が所有している限りは、一律に認められます。

【利用される場面】
 相続財産としての評価をする場合は、このように半額に評価されることにより所有者は得しますが、株式を譲渡する場面になると、半額で売ってしまうと売り手側は損をすることになります。なので、株式譲渡の際は、DCF法、純資産価額法、直近売買事例法(当初の取得価額と同額で売却できる場合など)が一般的に採用され、あまり日の目を見ることはないようです。
 
 
 
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2013年10月16日

貴金属積立への譲渡益課税は株や不動産と違う?!


 以前の記事で、シンガポールに移住した方の、株式等の譲渡益に関する課税関係について書いたことがありました(詳細は別記事「非居住者として日本の株式を売却した場合の課税関係」をご参照ください)。

 今回は、リ・タナカなどで積み立てた金やプラチナなどの貴金属を売却した場合の課税関係について書きたいと思います。

 一般的には、金やプラチナの積立も、ミニ株などの株式の積立も、同じような「投資商品の一種」という感覚で行われており、どちらが将来的に価値が上がりそうか、という判断で選択をされていらっしゃるケースが多いかと思われます。
 なので、売却益が出た場合は、居住者であれば株式と同じような分離課税、非居住者であればキャピタルゲイン非課税の原則により、課税されないのではないか、とつい思いがちです。

 結論から申し上げますと、リ・タナカなどで所有している金積立や金地金は、たとえ海外に移住したとしても、国内不動産と同じく「国内に存在する財産」として扱われます。なので、国内不動産同様、非居住者であっても売却益は日本国内で課税されてしまいます。
 さらに、不動産や株式と大きく違うところは、分離課税ではなく「総合課税」で課税されてしまうということです。

 分離課税であれば、たとえどんなに青天井で利益が出たとしても、居住者であれば所得税(国税)15%、地方税が5%の計20%、非居住者であれば、地方税がないので15%しか課税されません。
 ただし、総合課税となってくると、累進課税で所得税計算がなされてしまうので、売却益が巨額に出てしまうと最高税率に到達してしまう可能性があります。居住者であれば最高税率50%(住民税込)、住民税のかからない非居住者でも40%の税率が課せられます。つまり、お医者様や企業経営者のような高額所得者の場合、下手をすると給与所得のみで最高税率に到達しているケースもありますので、さらに金地金の売却益が加わると、全利益の半分ぐらいが税金で持っていかれることになるのです。

 なお、金地金にも長期譲渡所得と短期譲渡所得という考え方があり、5年以上保有している金やプラチナを売却すれば所得額の2分の1に対して税率を乗じることになります。この点については、不動産の場合と同様です。ちなみに株式の場合は、短期所有とか長期所有という考え方はないですね。

 以上をまとめますと、売却益の課税関係は以下のようになります。

 株式等 … 分離課税 & 長短所有の区別なし
 不動産 … 分離課税 & 長短所有の区別あり
 金地金 … 総合課税 & 長短所有の区別あり

 なので、金地金投資と株式投資を選択する場合、金の方が儲かったと思っていても、特に短期譲渡の場合だと、最後の納税の瞬間に、手残りキャッシュ・フローが逆転してしまう可能性があります。

 結局、貴金属投資は「安全資産への投資」と割り切って、長期的に行うことが肝要かと存じます。

【金地金の税額の計算方法】
(1)所有期間 5年未満の場合(短期譲渡)
・売却価額−(取得価額+売却費用)=譲渡益
・金地金譲渡益+金地金以外の譲渡益−譲渡所得特別控除50万円=譲渡所得
 → この金額に給与所得などの所得が合算され、総合課税されます。

(2)所有期間 5年超の場合(長期譲渡)
・上記の譲渡所得の2分の1が、給与所得等に合算される金額となります。

(注) 短期譲渡と長期譲渡の両方がある場合、短期譲渡の方から先に50万円の特別控除を充当します。


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