2013年08月28日

相続税の計算の仕組み


 今回の記事は、相続税の基本的な計算過程についての解説です。相続税の納付額の計算は、
@ 相続財産の評価計算
A 財産評価後の納税額の計算
の二段階からなります。

 もっぱら「相続対策」というのは、@の相続財産の評価計算が焦点となります。
 いかに自己の所有する財産を「低め」に評価計算されるようにするかというのが相続対策の目的であり、10年、20年がかりで様々な対策を講じていくことになります。不動産の評価や非上場株式の評価などを中心に論点が盛り沢山なので、相続税の申告書を税務署に提出した後、見解の相違を理由に何度も訂正・再提出を求められる原因ともなります。この点に関するアドバイスが、資産税専門税理士の腕の見せ所でもあるので、いろいろな対策本が過去何十年にもわたって出版されているところです。

 その一方で、Aの財産評価後の納税額計算については、ほぼ一本道です。
 私のブログ記事も@の相続財産の評価額をいかに下げるか、という切り口が多くなる傾向になると思いますが、今回はAの納税額の計算過程を、最低限の知識として概括的に抑えたいと思います。

 まず、相続財産の評価計算が終了したものと仮定して、その後の納税額の計算式は、以下のとおりとなります。

● 計算の第一段階 : 課税遺産総額を以下の数式で算定します。

+)相続財産(不動産、有価証券、現預金、書画骨董など) ※1
+)みなし相続財産(受取保険金や死亡退職金) ※2
−)みなし相続財産の非課税分 ※2
+)相続開始前3年間の贈与財産 ※3
−)相続債務 ※4
−)葬式費用、弔慰金 ※5
−)基礎控除5000万円(平成27年1月1日より3000万円)
−)法定相続人数×1000万円(平成27年1月1日より600万円)
= 課税遺産総額

※1 国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付(遺贈)することにより相続財産から除外できる特例があります。売却の難しい書画骨董や山林などでよく用いられます。

※2 被相続人が死亡した際の生命保険の受取金や死亡退職金も、相続税上は「相続財産」と判定されるので留意が必要です。
 ただし、それぞれが「法定相続人数×500万円」という非課税枠が設けられているので、
・生命保険に加入してその分の現預金を相続財産から除外し、簿外資産としておく
・事業オーナーの場合法人に現預金をプールしておき、最終的に死亡退職金として受け取ることによって、所得税及び相続税をダブルで節税する
などの相続対策がメジャーな手法として用いられます。

※3 いわゆる「駆け込み贈与」を防止するためです。ただし事前に納付していた贈与税は相続税額から控除可能となります。

※4 不動産をローン付きで購入していた場合、相続財産の算定過程においてローンは100%の金額でマイナス財産と評価されますが、不動産は様々な理由により購入額よりも低めに評価される傾向があります(別記事をご参照下さい)。
 それゆえ、ローン付きで不動産を購入することは、相続対策の王道として昔から用いられている手法です。

※5 葬式費用や弔慰金のほか、墓地や仏壇なども相続財産から除外されます。

● 計算の第二段階 : 課税遺産総額を各法定相続人に分割します。
 課税遺産総額の算定が終了したら、まずはそれを法定通りの割合で相続したものと仮定して、各相続人に分割します(実際の相続割合はともかくとして)。例えば、相続人が妻一人、子供二人であれば、妻が2分の1、子供は各々4分の1ずつに分割します。
 これは、相続税を計算する際に遺産の分割の仕方によって金額が変わることを防ぐためであり、納税総額を法定相続割合で相続した場合の金額で確定させてしまう、ことが目的です。
 この分割された金額にそれぞれ相続税率を乗じることにより、各相続人の相続税額を計算します(※6)。この結果算出された各相続人の相続税額を一度合算し、さらに実際の分割割合で、各々が負担する相続税額を再配分します。

※6 平成26年までの相続税の税率及び控除額は国税庁のホームページをご参照ください。
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm

● 計算の第三段階 : 各相続人の負担する相続税額の配分額が計算されたら、以下の加算や控除を行うことにより最終的な納税額を各相続人ごとに計算します。

+)各相続人の負担する相続税額
+)2親等以上の相続人に対する2割加算 ※7
−)贈与税額控除 ※3
−)配偶者の税額軽減 ※8
−)未成年者控除 ※9
−)障害者控除 ※10
−)相次相続控除 ※11
−)外国税額控除 ※12
−)相続時精算課税制度に係る贈与税額控除 ※13

※7 孫が財産を取得すると実質相続を1回免れていることになること、また法定相続人でない人が財産を取得することはそもそも偶然性が高いことを考慮して、一親等や配偶者以外の者が相続する場合は各人の相続税額に20%が加算されます。

※8 配偶者が取得した財産は1億6000万円までは非課税となります。
 また、法定相続分以下であった場合は、1億6000万円を超過したとしても非課税となります。
 これは、死亡した被相続人の財産形成に貢献した配偶者が一人残された場合の生活を保護することが目的です。
 ただし、遺産分割で揉めてしまいますと適用を受けられなくなる可能性があるので留意が必要です。また、配偶者控除を適用した結果相続税がかからないことがわかり、そもそも相続税の申告書を提出しなかった場合は、配偶者控除の適用を放棄したことになり、追徴課税が来てしまうので申告書の提出は必ず行う必要があります。

※9 未成年者控除
 成人に達していない法定相続人は、その未達年数×6万円だけ税額控除できる特典があります(1年未満は1年として切り上げる)。

※10 障害者控除
 70歳に達していない障害者については、その未達年数×6万円だけ税額控除できる特典があります。なお、特別障害者の場合は、未達年数×12万円となります。

※11 10年以内に2度以上同じ財産について相続があった場合は、年数に応じて税額控除の特典があります。

※12 外国に存在する財産で、すでに外国の法律で相続税に相当する税額を納付している場合は、日本国内における相続税から控除できます。

※13 相続時精算課税制度に基づいた贈与税を納付している場合、相続税額から控除することが可能となります。
(相続時精算課税制度:65歳以上の親から20歳以上の法定相続人に対して2500万円までは無税で贈与、2500万円以上の部分は一律20%で贈与することが可能となり、相続発生時に計算された相続税と精算する制度のこと。ただし、110万円の暦年贈与との併用は不可。)

以上が、相続税の納付額の算出過程となります。


 
 
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2013年08月15日

日本における「贈与」の活用の仕方


 今回の記事は、「生前贈与」の活用について、まとめてみたいと思います。
 日本の相続税率は累進課税でかなり高めですが、贈与税率はさらに高く設定されております。例えば、平成27年からの改正税率によりますと、相続税率は課税資産が6億円超でやっと最高税率の55%に達しますが、贈与税率は課税資産が4500万円超になった段階で、最高税率55%に到達してしまいます。

 このような、相続税以上に高い税率の「贈与」ですが、毎年「110万円」までは無税、ということは皆さんもご存知のことと思われます。これを「暦年贈与」と言います。
 暦年贈与を毎年繰り返すことによって、相続が発生した際の課税資産を少しでも減らしていくというのが最もわかりやすい贈与の活用の仕方です。なお、それぞれが110万円の範囲であれば、複数の人に対して贈与を実行することが可能です。

 「生前贈与」には、上記の相続財産を減らす効果のほか、以下のような利点があります。

● 孫や第三者にも財産を移すことが可能
 相続が発生した場合は、原則として、配偶者や直系親族の子供など、いわゆる相続人の範囲に該当する方に財産が移譲されることになります。
 しかし、贈与の場合は、孫や兄弟や第三者など、相続発生時に相続人に該当しないことが想定される人々にも、財産を委譲することができます。これは、生前贈与を活用する際に考えるべき大きなメリットです。
 例えば、祖父から孫にダイレクトに贈与した場合、祖父から子供、子供から孫へと2段階で相続税が徴収されるよりも、納税額が安くなる可能性があります。
 また、相続開始3年以内に相続人となる人が贈与を受けていた場合、それらの贈与財産は相続財産として遡及計算されます。したがって、110万円以内で無税と思って行っていた贈与も、3年分だけは無効になってしまうのですが、相続の対象とならない人に行っていた贈与は、相続開始の3年前に行っていたものでも無効にはなりません。

● 資産価値の低いタイミングを選んで行うことができる。
 相続については時期を選ぶことができませんが、贈与については自由に時期を選ぶことができます。株式や不動産など、その時々によって評価額が変わる資産については、現状の評価額が低い時に贈与を実行することにより、資産の評価額が上がった将来に発生する相続税よりも、納付額を抑えることができる場合があります。

【贈与を実行する際のポイント】
● 将来に値上がりの可能性の高い資産から優先的に贈与を行うこと。
→ 上記にあるとおり、資産の評価額が低いうちに資産の移譲ができることが贈与のメリットであるため、値上がりの可能性の高い資産を優先的に贈与の対象とすることが基本になります。

● キャッシュ・フローを多く生む資産を優先的に贈与する。
→ 例えば、賃貸アパートやマンションなどの収益物件は、所有している個人の「不動産所得」を生み出します。被相続人(相続の際に死去する人)がずっと収益物件を所有し続けていると被相続人に現預金が蓄積されていき、それも相続の対象となってしまいます。このような資産を早い段階で将来の相続人(資産を引き継ぐ人)にあらかじめ贈与しておけば、不動産所得による現預金の蓄積も相続人に発生するため、将来の相続資産の圧縮効果があります。

● 連年贈与に注意すること
→ 例えば、贈与税を免れるために、毎年きっちりと110万円の現預金を贈与していたとします。例えばこれを20年続ければ、2200万円の財産が、無税で相続人に移譲できることとなります。しかしこの場合、税務署は、「当初から2200万円の財産を贈与する意思があった」ものと認定し、多額の贈与税と加算税を追徴してくる可能性があるのです。これは大きな落とし穴です。
 これを避けるためには、毎年贈与契約書を作成し、金額も微妙に毎年変更するなど、対応策を講じる必要があります。

● 双方に贈与の意思があったという証拠を確実に残すこと。
→ 子供が幼少のうちから、子供の名義の預金通帳を作り、毎年110万円の範囲内で預金をしていくというやり方がありますが、贈与というのは「お互いが事実を認識していること」が法の建前なので、子供が預金通帳の存在を知らなかったり、知っていたとしても通帳と印鑑を親が管理している場合は、税務署に否認されてしまいます。
 これを予防するためには、例えば以下の対策が必要になります。
・通帳や印鑑は受贈者が自ら管理する
・故意に贈与額を110万円以上にし、少額の納税をしてその都度贈与の申告を行い、贈与の事実を確定させる。
・公証役場で贈与契約書の確定日付を取得する。

【その他】
● 配偶者贈与
 婚姻期間が20年を経過した夫婦間において、居住用不動産(もしくはその取得のための資金)が、2000万円の範囲で無税で贈与できます。

●教育資金贈与
 信託銀行を利用することにより、祖父母からの教育資金を1500万円の範囲で孫に贈与することができます。


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