2013年06月21日

債務超過の会社を合併して繰越欠損金を利用するための要件 


 日本の法人税法においては、課税所得の800万円までは軽減税率が適用されるため、事業が複数ある場合は、会社を分割し所得分散を図った方が節税対策となる、と以前の記事で記載させていただきました。
 ただし、これは分散した事業がすべて黒字になればこそ。事業分散した法人の一つが赤字を計上した場合は、黒字の法人との損益通算ができなくなってしまうため、逆に増税効果を招いてしまいます。

 そのような場合に損益通算を行う一つの手法として、連結納税制度の導入が考えられますが、この届け出は適用を開始したい事業年度の始まる3カ月前までに提出する必要があります。ということは、届け出を提出してから実際に効果を発揮するまで1年3カ月もかかるので、即効性はありません。
 かといって、無理やりグループ間同志で損益を付け替えるための取引を「捻出」してしまうと、税務調査があった場合に税務当局に目を付けられてしまいます。いくら契約書を作成していたとしても、経済合理性のない取引と税務当局に認定されてしまった場合は、費用を負担した側が「寄付金認定」を受けてしまい、追徴課税を申し渡されてしまいます(グループ法人税制が適用されるケースは除く)。税務調査の際の労力も相当な負担になるので、経済合理性を主張できる余程の自信がない限りは、安易なグループ間取引は控えるべきだと考えます。

 一番確実な手段と言えるのは、債務超過となり繰越欠損金が生じた会社と元気な黒字会社とを合併する組織再編です。ただし、欠損金を抱える会社を消滅会社として吸収合併を行う場合、この消滅会社の繰越欠損金を存続会社で使用するためには「税制適格」合併として認定される必要がありますので、その成立要件に留意する必要があります。

 債務超過の会社が関係する組織再編は「無対価組織再編」と呼ばれております。従来より、通常「税制適格」と認定される組織再編は、

・合併の対価として株主に交付されるのは株式のみ
・会社分割の対価として分割元法人に発行される対価は株式のみ

という条件が付いておりました。ただし、合併で債務超過の会社を吸収したり、会社分割で債務超過の会社を切り出す場合は、

・事業価値が0円なので株式は発行しない

ということになりがちです。この場合、果たして税制適格なのか、それとも税制非適格なのか、が税法上曖昧のままでした。

 この問題を解決するため、平成22年度の税制改正により、無対価の組織再編における税制適格の要件が定められました。内容としては、

(1)無対価による会社分割につき、これが分割型分割に該当する場合と、分社型分割に該当する場合にそれぞれ区分されて新たに定義され(法人税法第2条十二の九ロ、同条十二の十ロ)
(2)無対価組織再編成の適格性の判定について、原則として資本関係の変わらないものは適格再編成、資本関係の変更を伴うものは非適格再編成

と整理されました。加えて、無対価合併、無対価分割、および無対価株式交換の適格性を判定するにあたっての持株要件も、以下のように明確になりました(法人税法施行令第4条の3)。

【無対価組織再編の持株要件】
● 合併会社が被合併会社を100%支配する親子関係であること
● 合併会社と被合併会社が「一の者」に100%支配される兄弟関係であり、合併後の会社も引き続き100%同一の株主に支配される見込みであること
● 合併会社とそれを100%支配する「一の者」で被合併会社を100%支配しており、合併後の会社も引き続き100%「一の者」に支配される見込みであること
● 被合併会社とそれを100%「一の者」で合併会社を100%支配しており、合併後の会社も引き続き100%「一の者」に支配される見込みであること

 この「一の者」の定義が非常に厳しく、国税庁は「本人のみ」という見解を示しております。つまり、妻や親子など親族が株式の一部を所有している場合においても、「非適格」という判定が下されてしまうのです。

国税庁のサイト:http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/33/20.htm

 合併法人もしくは被合併法人のどちらかに、わずかでも本人以外の株主を迎え入れてしまった場合は、債務超過に陥ったグループ会社を黒字の会社に吸収させて繰越欠損金を消化することは難かしくなってしまいます。なので、相続対策などで株式を親族で分散所有するケースでの無対価組織再編の活用は難しく、ホールディングス(持ち株会社)の傘下にある法人同士の組織再編で有効な手段になると言えるでしょう。



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2013年06月12日

外国人が日本の資産を所有した際に課せられる相続税


 最近、円安が進んだことにより、クロスボーダーの投資環境が一変しました。アベノミクスが始まる前は、円高であることを背景に、日本企業が外国企業を買収したり、日本の資産家が海外の不動産を物色するケースが多かったのですが、アベノミクス後は一気に円安となったため、外国人が日本国内の資産への投資を物色する動きが出てきました。為替の理由のほか、今日本の不動産や株式に投資しておけば将来的に値上がりするのではないか、という期待も背景にあるようです。
 先日、ある斡旋業の方から、「外国人に国内不動産を所有してもらった場合に、将来的に相続が発生するのか」とご質問を受けましたので、今回の記事は、その点について解説したいと思います。

 結論から言えば、外国人といえども、日本国内の財産を所有した場合は、その国内財産に限り相続税の課税対象となります。これは、その外国人が日本に居住しているかどうかに関係はありません。
 たとえば、外国に居住している外国人が死去し、外国に居住している妻子が相続した場合であっても、またその外国に相続税の制度が存在しなかったとしても、日本国内の財産については日本における相続税の課税対象となります。
 これを相続税法上は、「制限納税義務者」と言います(相続税法第1条の3第三号)。また、この「制限納税義務者」の規定は贈与の場合にも適用されます(相続税法第1条の4第三号)。

 なお余談ではありますが、日本国籍を有する被相続人と相続人がともに外国で生活し5年以上非居住者になっている場合、相続税は免れると思っている人が多いようですが、この場合も「制限納税義務者」に引っかかってしまいますので、日本国内にある財産だけは、相続税の課税対象となってしまいます。

 今回私がご質問を受けた事象は外国人が日本の不動産に投資するケースでしたが、上記の話は不動産に限らず株式などすべての国内財産に当てはまります。もし外国人が日本国内資産への長期的な投資を検討するのであれば、将来的な相続税の発生も想定したうえで、購入を検討する必要があります。
 
 その際の、相続税の計算過程ですが、日本と同様に適用が受けられるものは以下の通りです。

● 相続時精算課税制度の適用は受けられます。
● 相続の課税対象となった国内財産の抵当権等で担保されている債務については相続財産の計算から控除することが可能です。
● 相続計算の際の通常の基礎控除は受けられます。
● 配偶者の相続税額の軽減は受けられます。
● 小規模宅地等の特例は受けられます。

その一方で、

● 未成年者控除は受けられません。
● 障害者控除は受けられません。
● 外国税額控除は受けられません。

 以上は、アメリカとの間で締結された租税条約がベースとなっておりますが、その他の諸外国とも、基本的に同じ考え方が適用されるようです。

 なお、この制限納税義務者の相続財産を評価する際にも財産評価基本通達の規定が適用されるので、不動産の場合は実際の購入価額よりも割安の評価額となりますし、非上場株式については類似業種比準方式の適用が可能であれば、純資産よりも低い価額で評価される余地はあります。なので、それなりに高額の投資でない限りは、外国人の個人レベルの投資案件に対して相続税が課せられるのはレアケースでしょう。

 外国人の方に国内資産の購入をお勧めする場合は、その投資規模から考えて相続税の心配をしなくてもよいかどうかだけ、 事前に確認しておきましょう。

                        
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