2013年03月14日

設立初年度は7ヶ月以内で決算を迎えたほうがよい?


 今回の記事は、会社を設立する際に初年度の決算月をいつに設定すればよいのか、というお話です。
 お客様からは、やはり、12月決算もしくは3月決算でお願いします、というご要望をいただくケースが多い傾向にあります。それ以外の、特に決算月にこだわりがないお客様の場合ですが、従来であれば、設立登記日から一番遠い月末(例えば3月中に設立登記したのであれば、来年の2月末が一番遠い月末)にしていただくようにお薦めしておりました。決算月には、どうしても納税や我々に対する申告手数料が発生するので、できるだけ遠い月に設定していただいた方が、お客様のご負担が和らぐからです。

 しかし、平成23年6月に消費税法の一部が改正され、必ずしも、設立日より一番遠い月末を設定した方がお客様の負担が一番和らぐ、というわけではなくなりました。消費税の課税事業者になるか免税事業者になるかを判定する際、以前は「2期前の年商(売上高)が1000万円を超えているかどうか」という条件のみで判断しておりました。逆に言えば、設立から2期間は、資本金が1000万円を超えない限りは、免税が約束されていたわけです。(資本金が1000万円を超える場合は、設立初年度から消費税の課税事業者になってしまうので要注意!)

 しかし、平成23年6月の改正により、新たに「特定期間」という判定要件が追加されました。これは、「前上半期の年商(売上高)もしくは給与等支払額が1000万円を超えてしまうと、当期が消費税の課税事業者になってしまう」というものです。すなわち、設立の際に話を戻しますと、設立初年度の前半6カ月間だけで、1000万円以上の売上(もしくは給与等)が発生してしまうと、2期目から消費税の納付が発生してしまうのです。

 ただし、この2期目からの消費税の課税を回避する方法が一つあります。それは、設立初年度において7カ月以内に決算を迎えることです。この場合、初年度に限り「特定期間なし」として扱われます(消費税法9条の2C三)。この措置により、1期目7カ月間、2期目12カ月間は、消費税の免税事業者としてやり過ごすことが可能になります。

 以上より、設立後6ヶ月以内に売上高が1000万円を超えそうな場合に限り、設立初年度は7ヶ月以内に決算期を迎えたほうがよい、ということになりますのでご留意ください。


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2013年03月05日

ミャンマーの税制 〜 概観


 最近、テレビ・新聞などで日本企業のミャンマー進出に関する報道が多く見受けられるようになりました。三井物産、伊藤忠商事などの総合商社、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行などのメガバンクのほか、ローソン、ファーストリテイリングなどの小売業界の大企業もすでにミャンマーへの進出を決定したと報じられております。また、準大手企業や中小企業の中にも、報道まではされないもののミャンマーへの進出をすでに決めている企業が多いようです。
 皆様もご存じのとおり、ミャンマーでは長年続いていた軍事政権が終焉を迎え、政策転換が行われております。2010年11月7日に総選挙が実施され,23年振りに国会が召集され、民主化に向けた政策、法案が続々と国会を通過するようになりました。長年の懸案だった二重為替レートの問題も2012年4月に一本化されており、海外企業を誘致するための法的整備も進行中であり、経済発展に向けての礎は確実に築かれつつあると言えるでしょう。

 ミャンマーはこれからインフラなどの整備、開発が行われるとのことで、大きなプロジェクトがいくつも立ち上がる見込みです。そのため、日本をはじめとする海外企業のビジネスマンが続々と入国しておりますが、「ホテルなどの宿泊施設が足りない。」「夜に過ごせるお店が少ない。」「クレジット決済に時間がかかる」など、まだまだ先進諸国の人間からすれば過ごしにくい環境であるようです。そのため、ホテルの建設や飲食店の設立などをビジネスとして行おうと考えている方々もいらっしゃいます。また、東京証券取引所と大和証券グループの支援により、証券取引所が2015年を目指して設立される予定です。数年後に上場する見込みのある企業に対して、今のうちから投資を実行しようとする風潮も所々で見受けられます。

 ミャンマーの納税制度については、税務調査の制度も確立されておらず、まだおざなりになっている面もあるようですが、現地に進出するに当たっては、最低限の基本的な税制は把握しておくべきだと思いますので、以下、ミャンマーの税制の概要を記述して参ります。

【法人所得税】
@ 原則
 現地法人を設立した場合の法人税率は25%、支店を設立した場合の法人税率は35%です(ただし、ミャンマー投資委員会の認可を受けた場合は25%になります)。なお、欠損金の控除期間は3年間であり、日本の9年に比較して短くなっております。

A 外資優遇措置
 ミャンマー投資委員会(MIC)の優遇措置の適用を申請し、外国投資法に基づき設立されたすべての企業は、優遇措置の対象となり、事業開始から5年間は法人所得税の免除が認められます(2012年の外国投資法改正による)。
 それ以外にも、有形固定資産の加速償却、原材料や設備の輸入関税の免除、輸出取引の商業税の免除、外国人雇用者の所得税の支払を法人課税所得から控除できる制度など、様々な優遇措置が設けられております。

【個人所得税】
@ 居住者、非居住者の判定
 ミャンマーに183日以上居住する者、もしくは定常的な住居を有する者が、ミャンマーにおける「居住者」になります。ミャンマーの国内において発生した所得は、居住者・非居住者に関わらずミャンマー政府による課税対象になります。ミャンマー国外で所得が発生した場合、非居住者の外国人のみ非課税となりますが、非居住者のミャンマー市民、もしくはその逆で居住者である外国人とも、ミャンマーでの課税が行われてしまいます。すなわち、ミャンマーはアメリカと同じく「全世界所得課税」を採用していると言えます。
 なお、日本は国内に住所を有し、または現在まで継続的に1年以上住居を有する個人を居住者と定義していることから、ミャンマーと日本の両方で居住者認定を受ける可能性もあります。この点、まだ両国間で租税条約が未締結であるため(2013年2月現在)、調整する仕組みが確立されておらず、留意が必要です。

A 所得税計算の流れ
 給与所得、事業所得、不動産所得、譲渡所得、雑所得などを合算した総所得金額から所得控除を行ったうえで、税率を乗じるので、計算過程は日本の所得税制と似ています。税率は累進課税方式で1%〜30%の範囲で行われます。日本との違いで言えば、年金、保険金、配当が非課税であるということが挙げられます。なお、有価証券の譲渡益は、売却した日から1カ月以内に申告しなければならず、税率は一律10%です。

【商業税(消費税)】
 原則5%ですが、米麦、野菜、魚などは免税となっております。また天然ガス、高級車、チーク材などについては、8%から100%の奢侈税が課せられます。商業税の申告及び納付は、毎月発生した商業税につき翌月7日までに行う必要があるため、注意が必要です。なお、年次の確定は決算日から3カ月以内に行います。

【源泉徴収制度】
 ミャンマーでは、以下の源泉徴収が行う必要があります。
@ 利息:非居住者のみに対して15%
A ロイヤルティ:居住者に対しては15%、非居住者に対しては20%
B 給与、事業体等との契約による支払:居住者に対しては2%、非居住者に対しては3.5%
 なお、配当に関する源泉はありません。

【その他の知識】
@ 取締役、会計監査人
 外資100%での設立の場合、非公開会社のみ設立となり、株主は最低2名以上必要なので、海外親会社からの資本金が99%と親会社の代表者などが残りの1%を引き受けるという形が一般的です。この非公開会社の場合、取締役は2名以上必要となりますが、2名とも外国人でも差支えなく、現地の人間を人選する必要はありません。また、会計監査人の設置が必須となり、現地の公認会計士を選任しなければなりません。なお、会社の決算日については、法人税の課税期間が4月1日から3月31日までと定められているので、3月31日に合わせるのが一般的です。

A 外国人料金
 ミャンマー政府は、水道光熱費や通信費などのインフラ料金に「外国人料金」を設定しており、外国資本が1%でも入っている企業は「外国会社」と指定され、外国人料金が適用されます。

 以上が概要ですが、ミャンマーにおいては今後の経済発展を見越して税制も含め制度の改正が頻出する可能性がありますので、継続的なウォッチングが必要になることでしょう。


参考になるサイト:
 ジェトロ http://www.jetro.go.jp/world/asia/mm/invest_04/

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posted by ふみふみ at 13:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 国際税務を武器にする時代です | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする